[うちのバッチャ] 37. ハエと蚊帳

 
37.ハエと蚊帳
 
 夏。テーブルの上の小悪魔が、出しっぱなしの食べ物にイタズラをする季節ですね。そう。ハエの飛ぶ季節がやって来ましたね!
 この季節になると私は、1つ楽しみが増えるのですよ。食卓の上にハエ取りリボンを吊るす楽しみが……。
 ハエ取りリボンは、私の小さかった昭和50年代には、どこの家の食卓にも夏になるとぶら~んと吊るされ、その粘着性のリボンにハエがくっつき、夏の終わり頃には黄色かったハエ取りリボンが真っ黒になるほどハエが捕れる、優れもののアイテムでした。
 「面白いほどハエが捕れる」とは、まさにこのことです。ハエとりリボンは意外なことに、薬剤を一切使わずに、粘着力だけでハエを捕る、環境にやさしいアイテムなのです。
 近代化が進んだおかげか。いつの間にやら我々は、食卓の上にハエの死骸がくっついたリボンがぶら下がっていることに抵抗を感じるようになりました。
 ハエ取りリボンが吊るしてある家はもはや、絶滅したかのようの思われています。しかし、ハエとりリボンにハエがかかることほど、面白いことはないのです。
 ぶら下げたばかりのきれいなハエとりリボンに、1匹目のハエがかかった時の愉快さといったらないです。
「フハハハハ! バカなハエめ!」
 私が勝ち誇ったように笑っていると、夫のケンさんが居間を通りかかって言いました。
「さとこバエめ!」
「……って、ケンさん! バカの代わりに私の名前を使うのは、やめてよ!」
 家の各部屋に網戸が入って、だいぶハエの数は減ったのですが。わが家は5歳と1歳の子供がいつも玄関の網戸を開けっ放しにするので、ハエも自由に入り放題なのです。
 バッチャもハエには敏感で、ブーンとハエが入ってくるとハエ叩きを持って、ほぼ百発百中で、一声発しながらハエを叩き落としています。その時、バッチャは一体何を一声かけているのかよく聞いてみましたら、「むすけ!」と言っているんですね。ようは、「この、虫けらめ!」と……。「むすけ!」と言う時のバッチャは、なぜかすごい気迫なのです。ハエが入ってくると、何故かわが家の面々は生き生きとしてきます。
 
 害虫といえばこの季節は、キャベツにつく青虫を捕る作業もあります。バッチャの畑のキャベツやブロッコリーは、薬を撒いていないので青虫がびっちりとついてしまうのです。しかし、虫を捕るのは案外楽しいことです。1匹1匹生きているからこわいのですが、これは、虫と人との闘いなわけです。
 割り箸で青虫をつまんでいってビニール袋に入れていきます。青虫取りは非常に地味な作業ですが、本当にハラハラして面白いなと感じます。青虫がかわいそうだと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、以前に、動物の意識の中に入っていけるという不思議な人から聞いたのですが、青虫の意識の中に入ると、青虫は「葉っぱうまーい、葉っぱうまーい」と、キャベツを食べている時、まさに至福の状態にあるのだと教えてもらいました。それならば、その至福のままにプチッとやってしまえばいいんじゃないかと思った次第です。
 今年の夏は、子ども達が蚊に刺されないようにと、友達に頼んで白いきれいな布で、蚊帳を作ってもらました。蚊帳を吊るすと、部屋の雰囲気は一変しますね。白い蚊帳に、子供達のテンションはうなぎ登りに。私のテンションも上がりました。
「フハハハハ! これで中に入ってこれまい、バカなハエめ!」
「さとこバエめ!」
 夫はまたしても横から、私の名前をバカの代名詞にして使うのでした……。虫との闘いは、夏だけの楽しみです。蚊帳に守られて眠る子供達を見ていたら、
「夏っていいなあ……」
 と、単純に思えてきたのでした。
 
 

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  1. おふく より:

    ちっちゃい頃、よくテーブルの上に登って
    華麗にジャンプしようとして、
    ハエ取りテープにくっついてしまい怒られました。

    弟はハエ取りテープよりも強力なネズミ取りのワナに
    頭からつっこんで、←何がどうなってそうなったかは未だに謎
    そのネズミ取りのワナの売り文句が
    「象だってくっついたら取れない」だったので
    大騒ぎで、結局つるんつるんの坊主になってました。

    ハエ取りにハエと一緒に自分がくっつくと、
    なんとも悲しい、切ない気持ちになるものです。
    ネズミではなく、弟がかかったワナは、
    その後無事にネズミを捕まえ、役目を全うしておりました。

  2. yamadaswitch より:

    あの粘着力は恐ろしいよね!