育児日記

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第1回 今すぐ子供を

昨年六月、私はなぜか青森からブラジルに、
サンマを売る目的で夫を連れて渡航した。
生涯の夢を叶(かな)えるためである。

私の将来の夢は、ブラジルでサンマとごはんとみそ汁の店を出すことであり、
その夢を叶えるためにはブラジル人がサンマを食べるかどうか、
試しに売りに行かねばならなかった。

そんなわけで、私はブラジルに何も知らない夫を連れて、
サンマを持って旅に出たのだ。二〇〇四年六月のことである。
なぜにそれが今回の子育て日記と関係があるのかというと、大いにあるのだ。

ブラジルで私は一度、死にかけた。

時速百キロで迫り来るタクシーにひかれかけ、
あと一瞬遅かったら死んでいたと思う。
運良く、ダンナが後ろから突き飛ばしてくれたおかげで死なずに済んだが、
なんというか。
「すべてがストップモーションに見えるといはこういうことをいうのか」
というほど、私の走馬燈は回転OK! 準備万端だったのだ。

タクシーにひかれかけた。
ただそれだけのことであるが、私の体はホルモンレベルで
えらいことになってたらしい。

「この人はもうアブナイ。 母体が滅ぶ前に子孫を残し、
種の繁栄モードに切り替えろ!」

そんな命令が体内で発令されたのだ。

なぜなら私は結婚をしたら普通、翌月には妊娠をして
人はお母さんになっていくものだと信じていた。
が、それがなかなかならなかったのである。
そのせいでのんきにブラジルまでサンマを売りに行ったのだ。
そしたらタクシーにひかれかけた……。
恐らく、完全にひかれていたら、いくら子孫を残さなきゃ!
という命令が発令されても、そりゃあちょっと無理だろう? 
ってことになるのだが。(つーか、死んでるだろ?)
ちょうどよくひかれかけたので、それが噂の不妊治療へと繋がったのだろう。

以前にテレビでやってた特集では、不妊治療に何度も通ってた女性が、
医学の力でもなかなか治らず苦しい注射を受けても妊娠できずにいたのに、
「上から鉄骨が落ちてくる」とか、
それこそトラックに「ひかれかける」などした時、
突然自然に妊娠したという事実があるのだ。
それは、母体の危機的状況によって、
今までウンともスンとも言わなかった体が
「こうしちゃいらんねえ! 今すぐ子供作らなきゃ!」
と、モードチェンジをするせいである。

そして二〇〇四年八月、ブラジルから帰ってわずか二ケ月で、
私の体にはお子さんが宿ってた。
めでたし めでたしである。

が、それは本当にブラジルに行ったからなのか? 
ひょっとすると私、妊娠中に何も知らずに、往復四十八時間もかけて
飛行機でブラジルに行ったんじゃないか? それって子供の脳に影響ないの?
ちなみに我が子は三月末日が誕生予定だ。
一体、どっち? どっちなんだ? ブラジル前? ブラジル後? 
誰か計算できる人、この子は親がブラジルでサンマ売ってる間に
できた子なのか、その前なのか、できることなら教えて欲しいと
心から願っているのである。

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