育児日記

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第14回 何をしても死ぬ。

魁・女塾……。
そんなものがあるかないかはわからないが、
産後、四週間を実家で過ごすために子供を連れて帰った私の前には、
三世代に渡る『魁♥女塾』のメンバーが待ちかまえていたのである。

この塾の塾長を務めるのは、
三人の子供と七人の孫、四人のひ孫を持つ祖母・良子だ。
そして女講師の母・順子、さらには、
半年前に子供を産んだばかりの北海道の姉までが、生後六カ月の赤子を連れて
弘前の実家に集結していた。一体、どうなることやら……ヒョオオオオオ。

昔から「産んで二十一日」、という言葉があるらしく。
産後三週間は何もしてはいけないと言われている。
水仕事をしてはならない、本を読んではならない、
挙句の果てには「外の景色も見てはならない」というのだからどうしたものか。
産後は何かしようとする度に、「そんなことしてたら、死んでまうや!」
と言われまくっていた。
ノースリーブを着ただけでである。
「さすがに死ぬなんてことはないんじゃないの……?」。
そう塾長に向かって反論すると、塾長は落ち着き払っていった。
「……今はわからねえかもしれねばって、齢とってから、
あの時、おばあちゃんのいうこと聞いておけばよかったっていう日が、来るの」。

祖母はピシッと断言した……。
すごみで負けた私はおとなしく言うことを聞くしかなかった。
……この、年長者たちのいう「死んで、まう」というのは、
本当に裏付けがあって言っているのだろうか? 
誰か、産後に肩出して死んだヤツがいたのか?

話はさておき、生まれてきた赤ちゃんのことなのだが。
新生児の額には、頭蓋骨のラインが見えるのを皆さんご存知か? 
妊婦さんは結構知ってる話なのだが、新生児の頭蓋骨はスライド式になって、
産道をすり抜けられるようになっている。
そしてそのスライド式の線が生後一カ月くらいまではハッキリと見えるのだ。

嫁ぎ先のおばあちゃんが来てこう言った。
「見へ。ここのとこの線っきゃ、触れば死ぬんだ?」。
「…ハイ♥?し、……死ぬんですか♥?」。
「そう。触れば、死ぬんだよー」。
そう言いながら、「触ると死ぬ」ラインを、おばあちゃんはぺたぺたと触っているのである。(オイオイ、死んでまうんじゃないのか…?)

触れば死ぬし、スネ出せば死ぬし、腕出せば死ぬし。
産後というものはとにかく、大変なものである。

しかし、どうにもこうにも、産後一週間目にやらなければいけない仕事を
抱えていた私は、「パソコン打つくらいは、たいしたことなかろう」と、
この女塾の中で祖母に隠れて、こっそり仕事を行った。
その直後である。原稿を上げた瞬間、目の疲れが猛烈に来て、
頭がぐわんとなったのだ。
「ヤバイ……仕事をすると、死ぬ」。
塾長の言うことは半分くらい、本当のことだったのだ。

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