[うちのバッチャ] 第四章 バッチャと青森の風土— 29. 津軽の厳しい冬から、春

第四章 バッチャと青森の風土 
 
29.津軽の厳しい冬から、春
 
 冬の間、家の中で裁縫をし、うたた寝をしていたバッチャ達は、ようやく春の日差しに誘われて近所を歩くようになりました。
 冬の間はめっきり来客の数が減るのすが、それは近所のバッチャ達も家の中に籠もって食糧を蓄えながら、冬眠していたのですね。暖かくなるにつれて、わが家を訪れるバッチャの数は日増しに増えてきました。 
 まず春の一報を伝えてくれたのは、ご近所のマツヤさんでした。バッチャ達のエンターテイメント(ようするに娯楽)の7割方は、「孫の写真」によるものです。マツヤさんのお孫さんが成人式を迎えたそうなので、写真を持って我が家を訪れてくれました。
 しかしよく考えたら、成人式から早2ヶ月……。
本当にバッチャ達というのは、春にならないと活動を開始しないものなのですね。
 そんなバッチャ達が張り切って畑にねまる(津軽弁で、座る)季節、春。
 春は畑と山菜との闘いです。山菜を採って、湯がいて、塩漬けにして。焼いて炒めて、味噌漬けにして。いかにたくさんの山菜を調理するかの勝負です。
 まずは一斉に、フキノトウが芽を出します。
 ぼやぼやしてると食べ頃を逃すので、フキノトウを見つけたら急いで摘んで、その日の晩ご飯に出します。とりあえずは天ぷらにして。
 待ちこがれていた春の味わい。「フキノトウが芽を出しました!」と、猛烈にバッチャにアピールします。
 アピールしておかないと、私の好物のばっけ味噌(フキ味噌)を作ってもらいそびれるので、必要以上に慌てながら報告します。
「バババ、バッチャ、ばっけが! ばっけが……!」
 ……って一体、何事なんでしょうね。
 ばっけ味噌は、その名の通りばっけ(フキノトウ)を洗って、刻んで油で炒めて、みりんと味噌を入れて弱火で煮詰めたものです。
 
 家で作るばっけ味噌ほど、春の味がつまったものはないと思います。ばっけ味噌は保存が効くので、フキノトウが採れるようになったら、とにかくばっけ味噌作りです。ばっけ味噌のおにぎりなんて、最高に美味しいのです。
 小さい子は山菜を好かないと思われがちですが、うちの息子は1歳の頃からこの苦みのあるばっけ味噌のおにぎりを食べて、ばっけの天ぷらを素手で食べておりました。
 ばっけは食べ頃の時期を逃しても、そのうち「フキ」になるのでお得です。山菜というのは本当に、無駄のない植物だと思います。
 このばっけの出る季節は実をいうと、目安があります。青森県内では渡ってきた白鳥がフォー、フォーと鳴きながらロシアに帰ると、ちょうど庭先のばっけが芽を出す季節です。
 白鳥が鳴き、山菜が芽を出し、バッチャ達が畑に溢れ出す季節、春。
 スプリング(英語で、わき出る・芽を出す・跳躍する)とは、よく言ったものです。
 
 

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