[うちのバッチャ] 15. サロン・ド・バサマ

15. サロン・ド・バサマ
 
 うちのバッチャは村の中でも有数の「聞き上手」なので、バッチャの友達はよく我が家の居間、もしくは畑に座って、豆の殻とかを剥きながら夕暮れ近くまでお喋りをしていきます。わが家はまるで、バッチャ達のサロンなのです。
 サロンではおまんじゅうや漬け物、しょうゆ煎餅などが振る舞われます。
我が家のバッチャが近所のバッチャの悩み事を、どのように聞いているのか。少し気になったので何の気なしに聞いてみたところ、バッチャはどんな問題に対してもこう答えていることがわかったのです。
「わい~。わい、わい。あらまあらま。どうしょうもなんねえなあ!」
 どうしようもなんねえって、一体、何が……?
 バッチャに寄せられる相談事の多くは、「うちの嫁が」とか、「うちの孫が」、「今年の野菜や漬け物が」「腰」とか「足」が、総じて「うまくいかない」ことだったりするのですが。
 それに対してバッチャは取りも直さず、「あらま!」か「わい~」で答え、最後は「どうしようもなんねえなあ。まあ、がんばりましょう!」で締めるわけなんです。まるで客に対して「え~すご~い!」としか言わない聞き上手のホステスさんみたいです。
 たとえ返事が「あらま」でも、黙って聞くことは一番大事なことだと思うのです。先日、私の友人から突然電話がかかってきて受話器を受け取ると、友人は会社であったことを堰を切ったように話し出しました。
 
「あのねえ、私は私のやったこと間違ってないと思うのよ。なのに上司の命令で自分が間違ってたように返事しなきゃいけないなんて、納得いかないのよ。それでね……」
 と言いかけたところに私が「それはねえ」と口を挟んだところ、その友人の逆鱗に触れてしまったようです。
「人の話は最後まで聞きなさいよー! ちょっと! お客様のクレームは最後まで聞くってのが、サービス業の基本のキの字でしょう? 途中で口挟んだりするもんじゃないわよ! 電話応対の者が、最後まできちんと話を聞くことで怒りに目がくらんだお客さんも、冷静になれるってもんなのよ! そんなことも知らないの?これだから自由業の人っていうのは……」
「ちょ、ちょっと! 私はあんたの応対係じゃないもん! なんでウンウン頷きながら応対しなきゃいけないのよ!」
 アドバイスなんて……。本当は誰も求めていないのかもしれません。何故ならその人の抱えている問題の解決策は、その人の中にしかないのですから。
 ただひたすらに悩みを聞いてくれる人が現れた時に、その人の問題は自ずと解決するのかもしれません。語ることによってこんがらがったパズルが正しく並べられていくように、その人の中にあるゴチャゴチャは、最後まで吐き出させるしかないのかもしれません。
 
 ならば、バッチャはもしやそれを知ってて、わざとあんな応対をしていたのでしょうか?
よく見てみると、この辺の村ではどこのバッチャも、大概「わい~。わいわい~。本当にな? どうしようもなんねえなあ。まあ、がんばりましょう!」という風に話を締めるので、悩み事がある人はとりあえず近所のおばあちゃんに相談してみると良いかもしれませんね。
 とりあえずは、津軽弁なら「わい~。」、標準語なら「あら~。」と、相づち打ってくれること請け合いです。
 
 
 

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