[うちのバッチャ] 19. 自然農の畑

19. 自然農の畑
 
 友達のエレキ君が神奈川県の大磯というところで自然農の畑を作るというので、東京に行ったついでに大磯に行って見てきました。
 自然農とは一体、何なのか?
 やり方は人それぞれだと言いますが、まず。基本なのが畑を「耕さない」ことだとエレキ君は言います。「耕さない・草を抜かない」そんな農法が存在するのか? と驚きましたが、よく考えたら山に生えている山菜は、肥料をやらなくても勝手に生えているわけで。耕したり草を抜かなくても、植物は自分の力で育っていくのかもしれません。
 
「根っこが土を耕してくれるから、雑草の根っこは抜かないで、根っこをかき分けて植えるんです。」
 エレキ君が言います。
「土の中にいる微生物も土の深さによっている種類が違うので、耕さないことで微生物の層を、より自然な形に保っているんです。生えてる雑草は根っこから抜かないで、鎌で切ったら土の上に置きます。そうすれば草が肥料になるし、水分が蒸発しにくいから、黒マルチをかけなくてもいいんですよ」
「本当に? そんなに楽なら、私にもできるかも~?」
 そう思っていたのですが、どうやら楽そうに見えたのは気のせいだったようで、草の根を抜かない自然農は、耕さない分、実は普通の農法よりもずっと手間がかるのでした。最初に耕耘機などで耕した畑では土も柔らかく、一気に種を植えることが出来るのですが、耕していない畑では根っこだらけの土を手でかきわけて種を植えなければならないし、どこに植えたかを良く覚えていないと雑草と作物の見分けも付きにくくなって、せっかく出た芽を抜いてしまうこともあるそうです。
 更に、雑草が作物よりも伸びた場合は日陰になって育ちにくくなるので、本当にしょっちゅう草を刈らなきゃいけないんですね。その分、野生に近い状態で育つので味わいは格段に深くなるのです。
 これは……収穫も手伝って、野菜をせしめねば! 
 自然農の畑で育ったキュウリは、味わい深く、花のような香りがします。キュウリに香りがあるなんて、それまで知らなかった私は驚いてしまいました。
 
 命豊かな自然農の畑ですが、うちのバッチャが見たら根こそぎ草を抜きそうです。
「わい~、こったに草とば生えらかして……」
 と。「生えらかす」は津軽弁で草が生えている状態を言うのですが、この言葉を聞くと草が生えるのを「抑えきれなかった」という、自責の念が伝わってきますね。
 バッチャは意外と几帳面なので、生えてる草には容赦ないのです。バッチャは夏の間、ずっと草むしりをしています。広い畑を、春は菜の花菜とニンニク、夏にトマトとキュウリ、ピーマンにナス、枝豆、トウモロコシ。秋は大根と白菜、キャベツにカブにニンジンと。広い面積を自由自在に野菜で彩っていくのです。
 
 畑を開墾している友達のエレキくんは、23歳です。以前はエレキギターの職人をしていたので、名前がエレキくんになりました。うちに遊びに来ると一宿一飯のお礼にバッチャと畑の草むしりをしていきます。
 23歳で農に目覚めるなんて、鋭いなあと思いながら。彼は神奈川県民ですが、青森県の岩木山の麓にある自然農の農園でお手伝いをしながら、農業を学んでいるのでした
 
 

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