24. 田んぼのハシゴ
カレンダーに「〆切り」と「稲刈り」と「遠足」が同じ月に書き込まれているのは、秋になった証拠でしょうか。秋……稲刈りの季節です!
毎年この季節は、家族が総出で稲刈りをして、近所のジッチャやバッチャ達との交流を深める日になります。稲を刈るときには近所の人が手伝ってくれるのです。
夏の間にそこを歩くと、3秒に1回の割合で足にカエルがぶつかって来る、通称・カエルストリート(両側が田んぼの間の道)も、すっかり道をバッタに取って代わられてバッタストリートになっていました。
バッタストリートでは、1歩進む毎にバッタが6匹跳びはねてゆきます。笑いながら歩きたくなる愉快な道です。
田んぼの稲もだいぶ棒に干されて。田んぼに人が立っているように見える「棒がけ」は、お米を自然乾燥で乾かす昔ながらの乾燥法なのです。
「これをよ、こうやしてとっくら返せ!」
バッチャは言語で説明するのを嫌うので、教えられる言葉は非常に短く、「技」としてのみ伝承されます。たいがいバッチャは、「ああせえ、こうせえ」と短く言って、自分でやってみせるのです。鯉のぼりを建てる時も言語による説明は一切しません。
「引っ張れ」
「紐、こうやせ!」
などの短い暗号のような言葉で鯉のぼりの揚げ方をケンさんに伝授していたところ、マニュアル世代の夫が
「バッチャ、言葉で説明さねんで、体で伝承しようとする……」
と、こぼしておりました。
身体で動いて、身体でものを覚えていくバッチャ達の記憶力というものは、頭ではなく身体にあるのではないか? と思ってしまいます。バッチャ達の働く姿は本当に格好よく、稲刈りに出た時のバッチャ達は、NBAのバスケの選手のようにも見えます。鮮やかな手さばきで、次々に稲が棒に掛けられてゆくのです。
この動きは、脳ではなく脊髄でやっている動きなのではないか? と。稲に触れた瞬間に棒に掛けるみたいな。シュシュシュシュシュ! と、まるで忍者のように素早く、稲を正確に干していくのです。
稲刈りの基本を支えるのは、バッチャ達のロープワーク……。紐結びがいかに深いものなのか、棒がけをしているとよくわかります。シュッと引っ張った時にほどけて、それ以外の時はほどけない結び方をしないとダメなのです。なんとかこの技を盗もうと、私は今必死なのです。
稲刈りの1つの作業工程をバッチャとケンさんと私、お義父さん、親戚や近所の人3~4人の、8人がかりでとりかかります。大体1日2時間、「稲刈り・干した稲のひっくり返し・脱穀」の3日で計6時間の労働で、おいしいお米が1年間食べられる計算になっています。
その2時間の作業内容が、非常にタイトなのです。
田んぼの端から端までその重たい棒を持って移動させたり、稲の束を抱えて脱穀にかけたりと。濃密な労働時間で働いていると、普段肉体労働をしない私は、2時間働いたらその後3時間は気を失ったように眠ってしまいます。
稲刈りを終えて無事家に帰り、泥だらけの長靴を洗って、農作業に使った棒とか、縄とか、ネコ車などを小屋の正しい場所にしまったら、稲刈りの作業も終了です。
どろどろに疲れて眠ると、何故か、自分が本当は青森県のこけしの産地、黒石市生まれの黒石市育ちであるという夢を見ました。
夢の中で私はこけしを抱いて眠り、こけしと共に育ち、休日には両親にこけし館に連れて行ってもらい、「昔、金のこけしってあったよねえ?」と呟いているのです。
気が付くと夢の中で3時間が経過していました。目覚めて、
「あれ、バッチャ達は?」
と聞くと、夫が言いました。
「バッチャ、天気いいはんで次の田んぼさ行ったや?」
「えっ、次の田んぼって……?」
「隣の家でも稲刈りやることさなって、そのまま田んぼさ、ハシゴして行ったや?」
な、なんと。嫁がぐうぐう寝ている間に、バッチャ達は稲刈りのハシゴをしていたのでした……! バッチャ達の体力に、恐れ入った次第です。
スイッチさん、バッチャはすごいですね!私はふと思ったのですが、バッチャ達は冬になると厚着になって丸くふくらんでいますが、あれを今流行のヒートテックにしたら、今以上に活動する生物へと進化するのではないでしょうか???若いと自分で思い込んでいる私たちにバッチャ達の底力を見せつけられるような気がします…
それは考え付かなかった!
たしかにバッチャは着ぶくれしますね。笑
ヒートテックのバッチャは新しい!!
これは久作さん、記事にしてみたいです!!
スイッチ