[うちのバッチャ] 25. アリジゴクとウスバカゲロウ

25. アリジゴクとウスバカゲロウ
 
 先日、気付いたらもう10月に入っていたことに気付いた私は、バッチャに言いました。
「気付いたら今年ももう、残り3ヶ月だなんて。時間が経つのは早いですね~!」
 するとバッチャは言いました。
「年、ゆくしなに(年を取るごとに)そうなるや? この間60(歳)だと思ってたっきゃ、もう80(歳)だもんなあ!」
 と…。おばあちゃん、あっという間って、20年もの時間があっという間なんですか……? 
 そんなある日、わが家で平成10年から使っている冷蔵庫が、製氷機のエラー・マークが突然点滅を繰り返し、氷ができなくなるという事態が発生しました。
 いち早く気付いたバッチャが
「これ、なんで点滅してらんだっけ?」
 と不審に見つめていたところ、夫が言いました。
「これは、何かを我々に訴えかけているんじゃないか?」
「エエッ一体、何を……?」
 そう私が聞くと、夫が声色を変えて言いました。
「今日、私の誕生日なの。今日、私の誕生日なの。」
「れれれ、冷蔵庫の誕生日が今日だって訴えているの?」
「ほら、エラー番号がH80って出ているだろう? これは、冷蔵庫の年齢で言えば12年だばって、ヒトの年齢で言えばもう、80歳だということを言っているのに、違いねえ。」
「ええっ人の年齢でいえば…って。犬が今3歳だけど、人の年齢でいえばもう20歳ぐらいみたいなことを、この冷蔵庫が言っているわけ…?」
「きっとそうに違いねえ。それか、爆発まであと80秒とか…」
 夫はまた冷蔵庫の声色(何故か女性の声)を真似て語り出したのでした。
「爆発マデ、アト80秒デス。ダケド、皆サンヲ、傷ツケタクアリマセン……。」
「……って、随分配慮のある冷蔵庫だわね。自分は爆発するけど人を傷つけたくないって、しかし。」
 このように。突然にこんな小芝居が始まってしまうわが家では、夫が普段何を考えているのかよくわからないのです……。
 
 たまに口を開けば、冷蔵庫が話しかけてくる話とか。その内容はとてもシュールなことばかり。先日も、私がテレビで「アリジゴクはウスバカゲロウの幼虫なんです」と解説されていたのを見て、「まさかウスバカゲロウの幼虫がアリジゴクだったとは!」と驚いていると、夫が言いました。
「俺も昔は、アリジゴクだったんだ?」
「な…ななな、何ーっ!」
「ほら、下積みの頃……」
「って、一体何の下積みをすれば、アリジゴクから人間になるのよ!」
「アリジゴクから始めて、その後色々あって今はこうしちゅう(こうしているんだ)けどよ、本当はウスバカゲロウになる予定だったんだ?」
「そ、そうだったんだ……」
 しかし、件の冷蔵庫の点滅は、電気屋さんに連絡したところ単なる製氷機の故障だったのでした。夫が冷蔵庫の気持ちを代弁しているからといって、本当に冷蔵庫が「私、誕生日なの」と言っているわけではないから注意したいところです。
 夫は普段、無口な人なのですが、たまに口を開くとこんなことしか言わないので人が何を考えているのかは、本当に言葉に出すまでわからないものなんだなあと感じます。
「本当はアリジゴクじゃなくて、アリ天国って呼ばれたかったわ……」
 と、夫は未だにアリジゴクの気持ちを引きずっているのでした。
 
 

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