無意味せんげん - 山田スイッチ –
山田スイッチは、一切意味を求めません。ちなみに7歳男子と3歳男子を田舎で子育て日記。
2010/06/21 カテゴリー: 書評のようなもの。 タグ: アナザーばななよしもとワールド王国 よしもとばなな さんの「王国4~アナザーワールド」  はコメントを受け付けていません

ばななさんの小説が読めるというのは、

この時代を生きる私にとって、ご褒美みたいなものだと思う。

文章は、おいしい水のようにするすると入ってくる。

飲み込みがたいものからも、決して逃げることなく、ばななさんは

描いている。


読んでいて、ばななさんも今、同じ時代を生きているんだなと

感じた。

養老孟司先生の「かけがえのないもの」にも通じる世界観が

根っこにあって。そして、小説というまだ行ったこともないような

川の流れに、ざぶざぶと浸かって流されていくことの心地よさ。


濁流や、せせらぎ。どこへ流されていくのかわからないという、

興奮。先が読めない小説をばななさんは、書くんだなあと感じた。


ばななさんは、がさつさの表現がうまい。

とことんまで繊細さを表現したら、がさつさの持つ素晴らしさみたいなものに救われた、ような。そんな、がさつの神様みたいなものが

降りてきている。


これは、今を生きている私たちにとって、とても重要な本だ。一番好きなのは、この部分。


『アナザー・ワールド 王国その4』よしもとばなな 新潮社より


「(略)海の中がぎっしりと生き物で満ちた濃厚な世界だったことを、いつか人は忘れていってしまうんだろうか。でも、とにかくなにかと戦い続けていくしかないし。」


「なにと?」


私は言った。


「おのれと。世界に通じる秘密の扉はおのれの中にしかないから。」



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