永野雅子写真展

雅子さんに出会ったのは、

弘前の巨大な煉瓦倉庫の中で開かれた、

奈良美智展のカフェだった。

彼女は2005年の奈良美智弘前展の

写真家さんである。

写真家・雅子さん。

彼女の名前をHAPPY HOURのBBSにに見つけると、

いつも、いいようもない緊張を覚えていた。

名前から姿を想像してしまう。

中学の時に同級生だった同じ名前の「雅子ちゃん」が浮かび、

しばらくの間私は雅子さんを、

同級生の雅子ちゃんの顔で 覚えていた。

私の同級生だった雅子ちゃんは、

もう、名字が何、雅子さんだったか覚えてないのだが、

背が高く、凛とした印象を持つ子だった。

だから、雅子さん という名前を見かけると、

いつも。背の高い凛とした、「雅子ちゃん」の姿を思い浮かべた。

その姿で、私はいつもBBSの流れる情報を読む。

どんな名前の人も、

一瞬で姿を想像してしまう。

言葉しか残らないBBSから、私はいつも姿を想像して画面を見てしまう。

だから私の脳内BBSは、人々が映像で喋り合っている。

その中でも雅子さんの使う言葉は、

写真家の言葉だった。

世界の、ほつれるような言葉にならないものを

映し出す写真のように、

一言、ひとことが美しかった。

とても遠い世界の人に思えたので、

もし近くにいても、

時が降りてくるまでは出会えないと思っていた。

一年か二年かをBBSの前で過ごし、そして時が降りてきた。

実をいうと、雅子さんに出会ったその日は、

私の中の「何か」が漏れ出してる一日であって、

十ヶ月間腹の中にいた子供を出産し、

産後三週間を産んだ子と一緒に

まるで繭の中のような家で過ごして。

そんな毎日から初めて、表へ出た一日だった。

今でもその日の空気の色を思い出すことができる。

外の世界の空気が私に押し寄せてくるように見えた

どんな空気も私を乱した。

ましてや向かった先は弘前の聖地……吉井酒造煉瓦倉庫である。

奈良さんの作品は押し寄せる世界のようで、

煉瓦倉庫の空気は私を遠く連れ去って、

心がハラハラと泣き叫んで、

その後、雅子さんの写真に、もう一度出会った。

一度目は、弘前展のカタログにある、雅子さんの写真集。

開けた途端に 光に反射して残る、雪の足跡が出てきた。

それはほんの一瞬にしか見えない、美しく儚いものであって

今まで見たこともない、「消え去りそうな世界」 だった。

こんな形にならない気持ちを 形にされると、

私は涙がとまらなくなってしまう

それでしょうがなく、なんだか泣きながら、

出会ってしまった

ようやく私は雅子さんに、出会えたのだ。

雅子さんは 中学の同級生の 雅子ちゃんと

やっぱり姿は違っていたけど、

凛とした印象は同じだった。

ノドが苦しくて、うまく喋れなかったけど

私は恋をするより多くを感じていた。

何故か それでもう充分だと思えた

東京に住んでる方に、ぜひ、見てきてほしい写真展があります。

 ほんの数秒先には、消え去ってしまいそうな世界を。

写真にしてしまうすばらしい写真家さんがいます。

彼女は写真に する。

こころにしか残せないような、形にならないいっときを。 
 あまりにも美しい弘前の空気が、そこにある。

■ 永野雅子写真展 I NEVER FORGET YOU.
Yoshitomo NARA From the Depth of My Drawer
弘前展の記憶

撮影 永野雅子
会期 2005年7月26日(火)~31日(日)12:00~19:00
場所 studio Sarrut AOYAMA
   150-0001東京都渋谷区神宮前4-9-16 1F
   TEL:03-3403-3605
   
http://www.sarrut.com

協力 「奈良美智展 弘前」実行委員会