無意味せんげん - 山田スイッチ –
山田スイッチは、一切意味を求めません。ちなみに7歳男子と3歳男子を田舎で子育て日記。
2009/11/03 カテゴリー: 書評のようなもの。 タグ: ぼろ忠三郎田中 田中忠三郎さんの「ぼろ」 はコメントを受け付けていません
山田スイッチの『言い得て妙』 仕事と育児の荒波に、お母さんはもうどうやって原稿を書いてるのかわからなくなってきました。。。-091103_1117~01.jpg

青森県の民俗学研究家・田中忠三郎さんの本
『物には心がある。消えゆく生活道具と作り手の思いに魅せられた人生』
アミューズ エデュメントから発売された。
そして、同時に11月1日から開館するアミューズミュージアム
(浅草寺に隣接)のグランドオープンから、
田中忠三郎さんが長年に渡って収集した「ぼろ」の
展覧会『布を愛した人たちのものがたり』展が始まった。(2009年2月28日まで)

奇跡のテキスタイル・アートと呼ばれた、ぼろ。
誰も見向きもしなかったぼろぼろの布。
それは、青森県の漁村、農村、山村の女性が、
家族に少しでも暖かい物を着せようと
細かな布を接いで、接いで、そして
少しでも美しくという思いを込めて作られた布である。

静謐な美しさ。
時を得て、思いが込められたものにしか宿らない霊精。
こぼれてくる空気がある。

奈良美智さんが、grafと初めて廃材を使った小屋を建てた時。
廃材から、本当にこぼれてくるほどの空気を感じたのを覚えている。
忘れられないから覚えている。
それと同質の、何かたまらないものが
「ぼろ」にあると思う。

「汚くないんです。美しいんです。」
NHKテレビの熱中時間に登場した田中さんが語った言葉。
この美しさや、女性達の布に込められた思いを
大切にしてきた田中さんは、
本当に今まで誰も見向きもしなかった民具やぼろぼろの布を、
自分の使命として保存してきた人だ。

「私が捨てられない性分だから」と田中さんが電話口で語った。
「たなちゅうさんが、捨てられない性分で本当によかったです!」

私は答えた。

彼がいなかったら、このような思いの籠もった時代そのものが、
きれいさっぱりと忘れられてしまったであろう。

それを、展示してくれる美術館が生まれたことを、
本当に奇跡のように思う。

展示は2010年2月28日まで。