痛い映画

映画「リリイ・シュシュのすべて」に登場するピアノの演奏がすごく

上手なとても印象的な女の子が乱暴されて、

頭を丸刈りにして教室に現れるシーンがある。

「リリイ・シュシュのすべて」はとても痛い映画で、

見ている間は痛いし悲しいし、辛かった。

 

それは、現実に本当にありそうな世界だったから

私が、映画と現実の区別をつけられなくなってそうやって見てしまうほどの

映画だったから。

それに、痛すぎる話を我慢して観てしまうほど、

映像は美しく、音楽は絶妙のタイミングでこれ以上ない、というものを

水に浸すように与えてくる……。

 

だから、「終わりがない映画」と呼ばれるのだろう。

悲しくて、やり切れなくて、終わりがない。

出演していた15歳の宮崎あおいちゃんが、

「映画ってよくわかんないですね」と後日談で語っていたのを聞いて

ようやく、これが映画なんだ。そうか、娯楽だ、エンタメだ、

と気付いたのだ。

 

あまりにもその世界を作るのがみんな、うますぎたのだろう。

それを思うと、とても痛い痛いと感じていたAKB48の女の子の丸刈り報道も

エンタメなのだ……と合点がいった。

世間に向けて流した途端にそれはエンタメになってしまう。

 

私は、「リリイ・シュシュのすべて」を観て

もう人間には生まれ変わりたくないと思った。

人間の想像力の豊かさが時折、いやになるからだ。

きっと大人になれば現実としっかりと区別して観られるのだろうけど……。

 

文学は想像力の豊かさで何でも表現されてしまうけど、

やはり、どこか底に明るさを持ったものがないと

ひどく落ち込んでしまう。

想像力が豊かで、様々に人を傷つけたり傷つけられたりする人間って

そんなに上等な生き物だろうかと思う。

 

生れ変わったら、虫になりたい。

チョウチョウとかの綺麗な虫じゃなくて、

ダニとか、コオロギとかの虫になってつつましく、自分の食べる分だけ食べて

交尾して卵産んで、難しく考える余地なく死んでしまいたい。

それを思うと、どちらかというと横浜聡子監督の「ウルトラミラクルラブストーリー」は、

虫の視点から描かれているのかもしれない。

最後に主人公の脳みそが熊に食べられちゃうところなんかは、

奇想天外すぎて現実とは違うことをしっかりと意識させられてしまうけど、

虫のように価値なく、脳みそさえも熊に食べられるほどの

無価値であることの清潔さを

「リリイ・シュシュのすべて」を観た後には

感じてしまうのだ。

 

生れ変わったら虫になりたい。

それが、ここ数日映画を観た後の感想だった。

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