20代の頃から何度も呼んでる美輪明宏さんの
「生きるって簡単」。
このタイトル、すごいよね。
グッと来る回答があったので書き起こしてみました。
昭和62年が初版ですが、
未だに版を重ねているすごい本です。本屋さんで探してね!
Q 別れた彼女を忘れきれない彼と結婚してもいいでしょうか? (後略)
A (美輪さんの回答)
迷うような結婚ならおよしなさいよ。迷うということは、自分を守ることしか考えていないということなの。ということは彼よりも自分のことを愛している、ってことなのね。彼に対する愛情よりも自分に対する保身の愛情の方が比重が大きいということ。
愛するということは見返りを要求しないことよ。
与える一方、与えっぱなし。お金を貸すことと同じですね。利子をつけて返してもらおうと思って貸すと、帰ってこなかった時には腹が立つ。そのときには、泣かなきゃいけない、怒らなきゃいけない、その人との関係も悪くなる……。これを愛情に置き換えると「恋」の状態。恋とはまさに高利貸しと同じよ。見返りを要求しているわけですからね。
愛というものは、お金を貸すとき、帰ってこないものとハナから諦めてあげちゃうことなの。だから返ってくればもうけもの、返ってこなくたって、もともとあげたお金なんだから腹も立たないし、許せるじゃない。平気でいられるでしょう。
本当に彼を愛しているのなら、何があってもいい、身を滅ぼそうと、この地球全体を敵に回そうと、地獄に落ちようが、魔界に入ろうが、とにかくこの人と添い遂げてみせる、という決意をもって結婚することね。その覚悟がないなら結婚するのはおよしなさいってことなの。
だいたい結婚を軽く考えている人が多いのよ。結婚式とは結婚祭りなんです。間違って結婚すれば地獄ですよ。何も高いお金を支払って地獄に入ることはないでしょう。
結婚というものは、自分が生まれ育った環境、食生活、性癖、思想など、すべて違う人間が一つ屋根の下に住むことなのよ。味噌汁の味一つだって違う。そんな二人が生活をともにしていくわけですから、だいたいうまくいくわけはないでしょう。どちらかが妥協するか、忍耐するか、歩み寄るか、とにかく努力と忍耐のほかの何ものでもないわけです。
よく性格の不一致と言いますが、そもそも性格の一致なんてあるわけがない。一卵性双生児じゃあるまいし、神通力があるわけじゃない。不一致であたりまえなの。そのあたりまえ、わかりきったことで離婚すること自体がおかしなことなのよ。
結婚という社会的通念、価値観がおかしいのね。結婚なんて薔薇色でもなんでもなく、戦いと努力と忍耐以外の何ものでもない。だから結婚イコール幸せなんてことは絶対にありえないことなんです。結婚の価値観を世の中全体が見つめ直さなければいけないの。それは既婚者が、一番よく知っているはず。
それなのに既婚者は人をだますのね。結婚はいいものだってすすめるのね。これが間違い。もっとたいへんだ、たいへんだと言ってくれれば覚悟して結婚する。
どんなに苦しみがあっても覚悟して選んだ結婚ならば、山川を超えて嵐を超えて、そこから愛が深まっていくもの。いずれ年をとって、いい友だちになって人間愛に変化していく。男とか女じゃなく戦友同士のようなやすらぎといたわりがでてくる。これが夫婦の愛なんです。
どんなに難儀なことがあっても、地獄があっても、それを覚悟するならば結婚してもいいし、幸せを望むならおやめなさい。とにかくこの世の中の真実の姿は苦しみの中にあるのものなのですから。(後略)