怖いものって、きっとなんだかわからないから怖いんでしょうね。
正体さえわかっていれば、怖くないはず。
まして、その正体がね。こんなものだとしたら・・・
第168回 オバケの正体…。
最近の師匠のことですが。
三歳児になってからというもの、何故か「理由を述べるように」なりました。
師匠にお昼、何を食べに行こうか?と聞くと、一生懸命になってこう答えます。
「師匠、おすし好きだから、大好きだから…!おすし食べたいよう…。」と。
そのように何故か涙目で家族に訴え、
回転寿司で納豆巻きの付いたお子様ランチを食べる師匠…。
師匠、おまえが「大好きだから」と力説したお寿司だけど、
そのお皿の七割五分は、スパゲッティーとハンバーグだね…。あとは旗とか。
ようするに師匠は回転寿司の「回転」の部分が大好きなのです。
そりゃ、遊園地と食べ物屋さんが一体化したような施設ですから。回転寿司は。
師匠の言う「大好きだから!」という言葉は、
三歳児にしか発揮できないストレートな感情をもろに直撃してきます。
もう、ムダに「好き好き」言って育てたかいがあるというものですよ。
最近では朝、目が覚めた時に「おはよう」ではなく、
「好き…!おかあさん好き!」と言って抱きついてくるほど、
バカみたいに素直な子供に育ちました…。
バ、バカな子ほど可愛い…。
反対に、師匠の「嫌い」な存在も出てきました。それはオバケです。
部屋の間仕切りに使っているカーテンが、夜中、
少しでも開いていると、師匠は脅えてこう騒ぎ立てます。
「オバケくるから!オバケきちゃうから、カーテンしめて!」
ああ、怖いものにもちゃんと理由があるんだなあと思いますね。
「師匠、おかあさんね、三十二年も生きてるけど、
オバケなんて一回も見たことないんだよ?だから、オバケなんていないよ?」
すると師匠。
「いや!オバケくるから!」
すると風もないのに部屋のカーテンがゆらり、ゆらりと揺れました。
「おかあさん!」
師匠は脅えて私にしがみついて来ました。
次第に激しく揺れていくカーテン…、
すると、カーテンの向こうから、男の顔が…!
「あ、ああ…!」
「キャー!」
ケンさんでした。
「ホラ、あれがオバケだよ。」
ケンさん「やあ、オバケだよ!」
師匠は安心してしがみついていた手を離し、言いました。
「オバケ…、ケンさんだったね」その日以降、
ケンさんの呼び名は「オバケ」になりました。
「オバケ、テレビ見てるねえ」
やはり、怖いのは目に見えないものであって、
目の前で横になってぐーぐー眠るケンさんオバケの姿を見てしまった師匠は、
オバケを怖がらなくなったのでした。
もはや堂々としたオバケの姿に師匠は、親しみを感じているかもしれません。
子供の皆さん、オバケの正体は師匠のお父さんです。
だからあんまり、怖くないよ。