無意味せんげん - 山田スイッチ –
山田スイッチは、一切意味を求めません。ちなみに7歳男子と3歳男子を田舎で子育て日記。
2009/12/01 カテゴリー: アート。 タグ: 本岡秀則電車 本岡秀則さんの電車 はコメントを受け付けていません

去年か一昨年観に行った、

『アール・ブリュット 交錯する魂 』 ローザンヌ アール・ブリュットコレクションと日本のアウトサイダー・アートを観て、1番心に残ったのは、

自閉症で電車の正面顔ばかり綿密に描く、本岡秀則くんの電車の絵だった。


男の子っていうのは、本当に電車が好きだ。

師匠が生まれて6ヶ月くらい経った頃には、もう電車を見ると何もかも奪われたように、心を奪われていたし。マペ太郎も電車を見ると、黙って真剣な顔をして電車が通り過ぎるのをただただ、ひたすらに見ている。


「ああ~、電車が好きなんだなあ~」

という風にしか、それを受け取らなかった私だが。彼の、本岡秀則くんの電車を見てからというもの、もうそれどころじゃない感覚を持つようになったのだ。


意味なんかはなく、圧倒的に感じるものがあり。私は本岡秀則君の電車が好きになった。


圧倒的な、電車に全てを持って行かれる感覚。世の中の鉄男と呼ばれている人が全て、彼のような感性で電車を眺めているのなら、本当にそれが羨ましいと思う。昨日、マペ太郎と一緒に線路のすぐ側まで行って、しゃがんで電車を待っていたら、その鉄でできた車体の大きさに度肝を抜かれた。


電車は私の体の、4倍もの高さがあった。

それはそれは巨大で、凄まじく速く、まるで巨大な神が駆け抜けていくようだったのだ。

ゴーゴー言いながら爆風を巻き起こし、神のような電車が走り抜けていく。体に残る残響。それが全て。今のが全て。

世界はあまりにも不可解で、巨大で、憧れる。描きたくてたまらない。好きで好きでしょうがない。紙を埋め尽くすように、描かれた電車……。


アール・ブリュットというのは、正直わからない。だけど私は絵を観るとき、必ずその絵から吹き荒れる何かを感じる。感じない絵はつまらない。感じる絵だけが私にとって、たまらないものなのである。



そしてふと思い出すのが、2002年の弘前・吉井酒造煉瓦倉庫での奈良美智展だ。あれは、あれだけは特別だった……。あの倉庫は作品の力を倍加させる。こわいぐらいの圧倒的な空気が、作品から漏れていたのだ。2005年も、2006年も、倉庫で起こったことは全ておかしな、特別な空気に包まれていた。圧倒的な空気で、私たちをこの世でないどこかに、連れ去ってしまうのだ。



夢か幻か。だけど今、電車が通り過ぎる度にそのような神が走ってくるような感覚の中にいる本岡秀則君のことを思うと、その世界は現実にある世界だと実感できてくる。電車を見ながら叫ぶ、うちの赤ちゃんの

「ゴンゴー!ゴンゴー!」という声とともに。