無意味せんげん - 山田スイッチ –
山田スイッチは、一切意味を求めません。ちなみに7歳男子と3歳男子を田舎で子育て日記。
2005/11/10 カテゴリー: 書評のようなもの。 タグ: 物語 物語を読むために。 はコメントを受け付けていません

物語を読むために、

生まれてきたなあって思うんですよ。

先日、山下和美さんのマンガ。『不思議な少年』の四巻を読んで

思い出しました。

姉と一緒にマンガを買い込んで買い込んで、

読み込んで、読み込んで。

部屋の四方はマンガ本棚が出来上がってて、

その本棚にはなんと、数えたときに三千冊のマンガが

並んでいたんですよ。

本当の話。

姉とおこづかいを出し合って買ったマンガは、

古本屋さんや本屋さんで厳選に厳選を重ねた、

本当に面白いマンガばかりでした。

『ミスター味っ子』とか、味の決め手と全部のメニューを

そらで言えるッスよ……。

あまりの多さに一昨年、一部を整理しましたが、

姉は嫁入りにまで、

お気に入りのマンガを持っていきました。

(おいおい、嫁入り道具かよ!)

だからマンガを読んだ記憶は一生の宝物です。

小さい頃読んだ『不思議の国の千一夜』(全十一巻)とか、

ジュニア小説の『なんて素敵にジャパネスク』とか。

今読んでも本気で面白いものばかりなんです。

す、すげえ……。

『なんて素敵に~』は

時代背景が平安時代の物語なので、作者の方が本気で

よほどの量の参考文献を、好きで読んだのが伝わってくるッス。

「あたしは脇息を高彬に投げつけた」

とか、「その東宮のお顔が御簾越しに見えた」とか。

そんなのをジュニアな私たちに読ませる氷室冴子の力は、凄いね……!

はうううう……!

『不思議な少年』の作者の山下和美さんは、

仕事をしながら物語の朗読を聞くのが

最近の趣味と、何かのマンガに描かれていて。

本当に物語が好きなんだなあ と感じました。

『不思議な少年』の二巻、ソクラテスの話は、

読んで一ヶ月くらい泣き続けました。

それくらい、凄い話です。

山下和美さんは、『天才 柳沢教授の生活』の作者ですが、

本当に「人間ってなんなんだ……?」

という、人間のことを知りたくて、物語を描いているんだと思うッス。

そして、山下さんに限らず、「物語」のすごいところは、

読んでいるうちに身体が絡め取られるような

意識がその本の中に入り込んでいく力を持っているところ。

これを私はよく、「持って行かれる」と表現してしまうッス。

本の中に意識が持って行かれるほど、気持ちの良いことはないです。

『不思議な少年』四巻の、

最初に収められた物語 『由利香』

「いま生きているこの小さな町が 大好き」

という、

小さな町で暮らす由利香のこの気持ちと、

無差別殺人を犯す犯人の合田百合香は、物語の中、コインの裏と表のように

リンクしていきます。

裏と表。同じものかもしれない、裏と表。

その、どちらにも同じ態度で接することができる

少年はこう告げます。

「君は目の前の障害は

消していかないと

自分自身は存在できないと

思いつづけて

生きてきたね」

「でも大丈夫安心して  それもじきに終わる」

少年は犯人に「意味がわかりません」とスパッと撃たれますが、

不死の少年は死なないで、優しくこう語りかけます。

「人の心の中には その人自身も知らない

無限の世界が広がっているのを

知ってるかい?

誰も知らないその世界の中に

無数の人々が暮らしている

そこに暮らす無数の人々は

その人の影であり

その人はまた

その無数の人々の

影でもあるんだ」

でもそのことを人間は……  誰も知らない……

山下和美著 『不思議な少年』 第四巻 より

山下 和美
不思議な少年 4 (4)

本当に、物語を読むことほど

しあわせなことはないと。

そう気付かせてくれる一冊です。

ぜひ、全巻お買いあげ下さい…!

うああ~! 子どもが泣き出した!!

それではまた!