無意味せんげん - 山田スイッチ –
山田スイッチは、一切意味を求めません。ちなみに7歳男子と3歳男子を田舎で子育て日記。
2006/08/17 カテゴリー: ブログ。 タグ: アンドロー絵師 絵師アンド、ロー はコメントを受け付けていません

先日、今泉さんとケンさんと息子を連れて弘前の美味しいカレーのお店
「カリ・マハラジャ」に行ったときのこと。
何故かカレーを食べながら津軽弁の「…ろー!」について
言語学的に考えるという妙な時間を得た。
今泉さんは昨晩から青森の友人と飲みながら、
『何故、弘前のおじさんは「…ろー!」と言うのか』について
ずっと話し合ってたそうだ。


今 「『…ろー!』にはちょっとバカにしたニュアンスがある。
…ろー!いい格好して、…ろー!?って言うよね。」
例 「いい格好して、…ろー!」
(おや、いい格好してどこさ行くんだか、なあ!とかいう意。)
私 「isn’t it?と同じ意味なんじゃないですかね。だよね~みたいな。
弱い『確認』なんじゃないですか?」
今 「それにしては『…ろー!』って、答えを求めてないんだよね。
ケ 「『投げっぱなしの確認』だねん。」
私 「投げっぱなしの確認!?」

そう。『…ろー!』は使い方としては
文章+ろー という風に
「今日、役場盆で休みだいろー!?」(今日は役場がお盆で休みだったじゃないですか)
「バス、行ってまったいろー!」(バスがもう行ってしまったではないか!)
というようなニュアンスで使われ、
「自分に還ってくる」という性質も持つ。
意味としては「やってまったいろ。」(やってしまった、なあ。)ぐらいの意味で、
他人に対して同意を求めているのだけども、
決して他人に返事を求めているのではなくて、
『…ろー!』
まさに、投げっぱなしの確認である。
コレを使いこなせれば、津軽人としてより津軽人らしい言動が身に付くに相違ない!

近所の家に玄関を開けた途端に、
『自信』
という色紙を飾ってある家があるのだが。
なんていうか、よくある民芸品(アイヌっぽい木彫りの人形とか、ネプタ絵とか)
の中央にドドーンと、『自信。』
家の中央に『自信』という字を持ってくる家庭は
自己評価が高いのか、低いのか。
低いから「自信を持て」という意味を込めて「自信」なのか、
自信があって高いから「自信」なのかよくわからないのだが。
なんかそれをみると変な自信が溢れてくるのでそれを言うと
ケンさんに怒られる。
「ダメなくせに自信までつけてアンタ、どうするの!?」って。
グーで殴られる。

偉くないのに「偉い」と思いこむのは問題であるが、
自己評価が低すぎて悪くないのに「悪い」と思いこんだり、
ダメじゃないのに「ダメ」だと思いこんだりする人が多いのはなんか切ねえ。
自信のない人は決して、『…ろー!』とは言わない。
「バス、行ってまったいろ」は悪いのは自分ではなくて、
バスまたは周りにいる人のせいだと思っている。
「やってまったいろ」の「…ろー!」は「やってしまったがああ、しょうがねえ。」
という「切り捨て」または「切り替え」みたいなニュアンスがある。

やはり、投げっぱなしの確認というものは相当強い。
悩む人っていうのは大概、「切り替え」か「切り捨て」ができない。
まあ、言ってみれば優しい人なんだけど、
何か迷うことがあるから悩むわけで、
やっぱり迷いがあるっていうのはパワーを出し切れない原因になると思う。
迷わないと、相当パワーを一定方向に向けられるので。
最近、そういう意味で自分のやってることに「変だよなあ」とは、
思っていても「迷ってはいない」若い人に出会うことができたので
すごくラッキーだと思う。

そんなわけで、絵師だ。
香川大介
くんのことを最初に田口ランディさんが「放浪の絵師」と呼んだのだが、
本当に彼は「絵描き」ではなく、絵師だと思う。
三十キロの荷物を背負い、日本を歩いて放浪しながら自分の描く絵だけで飯を食っている。
墨で描く絵が内臓のような、延びていく枝のような不思議さがある
サイケデリックな和風。
三十代後半の人の絵かと思ったら、25歳の青年だったのでびっくりした。
25歳の描く絵にはとても見えない。

三十キロの荷物を背負って歩いていると、
大変に珍しがられ、海水浴場で「見てあれ!」とビキニのギャルに指さされ、
「鮫が出ればいいのに」
と思うような青年である。
「なんで放浪を始めたの?」と一応聞いてみたら、
「なんか、思いついたんです」と言っていたので
本物だなあと思った。
なんか、一人一人がその人にしか与えられないものに気付くときって、
思いついちゃうんだよね。
それで思いついたからって日本を歩いて一年半もかけて
放浪するかどうかっていうのはまた別な話だけど。
思いついて実行するのはなんか、本物って感じがする。

明日は和紙に絵を描いてもらうのだ。
うちのはあまり良いフスマじゃないから。

放浪している間に描いた絵は700枚近く。
日本に香川大介の作品分布図があれば
行って巡るのも面白そうだ。
津軽弁で「だいば」を使って表現すれば、
「なんぼおもしぇ奴だいば!」
といった感じである。
だいばー