無意味せんげん - 山田スイッチ –
山田スイッチは、一切意味を求めません。ちなみに7歳男子と3歳男子を田舎で子育て日記。
2008/12/11 カテゴリー: ブログ。 タグ: 旅行脳内 脳内旅行 はコメントを受け付けていません

田口ランディさんの「聖なる母と 透明な僕」を読んでから、
脳が冴えてしまって、夜中の二時頃目が覚める。
夜中の二時は、よくわからないが私にだけ
この世の仕組みがわかる時間だ。

私にだけわかるのだから、
それは「この世の中」ではなくて、「私の中」なのだ。
その私の中で、すごくひっかかっているもの。
怖くて、見ないようにしている無意識の中の蓋付きバケツの中に眠っている
ものを、ランディさんはわざわざ、バケツの蓋を開けて、書く。
それはその正体を見つめる作業だと思う。

タイトルの「聖なる母と 透明な僕」は、
美しいタイトルにも感じるが、それは、神戸の酒鬼薔薇事件の
犯人である少年が書いたあの言葉だ。
そしてランディさんは「聖なる母」として、
最も有名な母。マザー・テレサについて書いている。

神戸の事件で一番怖いのは、
犯人の少年が生首を校門に置いたことではないと思うのだ、私は。
猟奇的なことが、全然関係のない子供に勝手に行われた
その不条理が怖いのだと思う。

私は不条理なものが一番怖い。
もし犯人が関係のない児童ではなく、
自分の身内や、恨みのあった人物を狙ったのであれば、
意識に蓋して決して見ないようにするほど、怖くはなかったと思う。

猟奇的なことが一番怖いと思ったけど、違う。
人は猟奇を持ち合わせている。
猟奇の猟は、狩猟の猟だ。
現代人のほとんどは狩猟をしないので、
その本能に刷り込まれている猟の感覚を
持て余していると私は勝手に思う。
なんか事件を起こす前に縄文に還ればいいのに。 
これは夜中の二時に勝手に浮かんだ私の答え。

だから、ゲームというのは大概、敵を殺して倒すようにできている。
男性と女性でゲームに対する興味の差が出るのは、
大昔から狩猟は男の人が担っていたせいだと思う。
猟とは、生き物を殺して食うこと。
すごく単純な私は、そんな興奮を得たければ魚でも捌けばいいのにと思うのだが。
(魚って、マジですごいよ。)
そんなわけにはいかないのだろうか。

私は、村上龍さんの「トパーズ」という作品が
本当に怖くて、怖すぎて涙を浮かべながら読んだけど、
あの作品は猟奇的で不条理であるのに、
本当にたくさんの人が読んだのだ。
猟奇的な、考えられることの全ては、既に過去の人間によって行われてきたことだ。
原爆だって落とされたし、ナチスドイツだって人を殺した。
しかし、「何故、私が?」とか
「何故、この子が?」という不条理を
私は受け入れられない。

自分が不条理に殺されるのは嫌だが、
自分の子供が不条理に殺されるのはもっと嫌だ。
その後の不条理を生きるのが怖い。
だけど現実にはそのような不条理の中を生きている人が、たくさんいるのだ。

そういう気分を抱えていたところに、ケンさんが言った。
「ねえ、ケンさん。もしケンさんが不条理に誰か知らない人に殺されたらどうしよう?」
するとケンさんが言った。
「むしろ願ったり叶ったりだ!」
「ねね……願ったり叶ったり!?」
「人生は長すぎるんだいな。」
「ああ、確かに。三十過ぎてもまだまだ先が長いよね。人は。
犬とかの三倍は生きてるよね。カブトムシなら一夏しか生きられないのにね。
それじゃ、もしケンさんが誰かに殺されたり事件に巻き込まれたら、
師匠には『お前のお父さんは願ったり叶ったりだ』って言ってたよと言うよ。」
「うん。願ったり叶ったりだ。」

……ケンさんの愛読書は、手塚治虫の「火の鳥」と佐藤正の「燃える!お兄さん」……。
不条理を学び尽くした人間の言葉なのか……?

どうでもいいけど「燃える!お兄さん」の宇宙人だよ全員集合!は
一コマに一回笑わせるよね……ポキール星人、恐ろしいよね。
燃える!お兄さん (1) (集英社文庫―コミック版)/佐藤 正

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ランディさんは、相当事実を、事実として書く人だ。
この本の中で一番心に残った言葉は、第14世マタギの松橋時幸さんの言葉。
「いいえ。うさぎは遊びません」

聖なる母と透明な僕/田口 ランディ

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