無意味せんげん - 山田スイッチ –
山田スイッチは、一切意味を求めません。ちなみに7歳男子と3歳男子を田舎で子育て日記。
2012/10/26 カテゴリー: ブログ。 タグ: 公演十一東京舞踏雪雄 舞踏 雪雄子東京公演 十一月の光 はコメントを受け付けていません

youtubeで亡くなったドイツの舞踊家ピナ・バウシュの動画を見ていたら、

雪さんがピナ・バウシュにそっくりで驚いてしまった。
 
似ているが、ピナ・バウシュに雪さんが似ているのでもないと思った。
踊りのことだけを考えて、それを生きる道にした人は
必然と似てくるのだと思う。
 
「生きなさい」と「踊りなさい」は
同じ意味を持つ。
「生きている全てを実感しなさい」と、ピナは言っているみたいだった。
 
雪さんは、踊ることが全てになってしまった女性だと思う。
ある時は、菩薩のように静かにこの世を観ている。
その世界と舞踏の世界はとてもよく似ている。
死と生の間からすうっと現れる雪さんは、
現れた時に青白く発光している。
 
踊ることに関しては誰よりもこだわりがあり、
その精神性を重んじ、何をも譲らない。
 
だけど時折、何もかもを捨てた菩薩のような雪さんが現れる。
この世とあの世の境目に立つ時の衣装の造形は
水辺のように美しく、意識のほつれのようで、この世に二つと産むことがないものだと思う。
 
雪さんは踊っていないとおかしくなってしまう人だ。
もっともっと、狂ったように踊り続ければいいと思う。
 
今、生きていることを実感するために。
踊り続けるために。
 
この東京公演がその礎になることを願っています。
 
2012年10月26日 山田スイッチ
 
以下、雪雄子のHPより転載。
 
 
 
「十一月の光」 TSUGARU 雪のように溶けること
二〇一二年 十一月十三日
 
新宿 SpACE 雑遊
 
出演者
雪 雄子
 
衣装   雪 雄子
音響
照明   曽我 傑
宣伝美術 岩井康頼
写真 片山康夫
協力 太田篤哉 池林房
桑原茂夫
林 静一
林 節子
工藤正廣
吉増剛造 gozoCine
 
雪のように溶けること
 
「Rooh! mishinaga-a!」(ロー、ミシナガー! 津軽語で『ほら、ごらんなさい』)一九九三年、
十一月。生まれて初めて、家の上空を翔ぶ白鳥を見る。水のような空の彼方から響き渡る白鳥たちの声、白いV字型の姿は、未来の誕生を予告する、風のサインのようだ。津軽人として、二十年の月日が流れた。十一月に帰って来る白鳥は、初雪を降らせる。三月ー、残雪の田んぼに、真っ白な体半ぶん迄 泥に浸かって、啼き交わしながら食事を摂る白鳥たちが群れをなす。やがて、極北へと、溶けるようにして消えて行く。ヒジカタ タツミ 不思議な響きの、その人を観たのは、「四季のための二十七晩」で、アートシアター新宿という処だった。四十年前の事だ。不思議な光を放っているその人のからだに雪が
降っていた。瞽女唄や、津軽三味線の音色も、その時が初めてだった。一九七五年、雪の降りしきる、北方舞踏派の出羽三山麓の大伽藍に、その人が訪ずれて来た。「長居したな。」、というコトバを残すと、一瞬の闇の中を浮きたつ鳥のように、着流しに、下駄の後ろ姿を残して、去って行った。
 その時代の、新宿の一角に、「柚子の木」があった。十九才になったばかりの私の修業時代を支えて下さったのは、後に、林静一夫人となる、節子ママ、太田篤哉、桑原茂夫、林静一さん等であった。その後、大駱駝艦(麿赤児主宰)の創 成期に、私は阿佐ヶ谷のお墓の脇の、貧相なアパートの四畳半一間からキャバレー巡業の旅に出る事になる。金色のハイヒールが、「ダンサーとしての旅立ちは、こんなものさ、」と語っているような、十九才の終わりの年であった。土方巽と、北方舞踏派の交流は、出羽三山麓から小樽時代に入ると、途絶えてしまう。一九八五年、土方巽の死の前年に、師によって、演出、振り付けされた、「鷹ざしき」を最後に、北方舞踏派は解散する。ひとり津軽入りを果たした一九九三年には、村上善男氏(二〇〇六年 ALSにより、逝去)がおられた。岡本太郎から頂いた、「君は北で闘え」と言う言葉を 、私にも投げ掛けるように、叱咤激励して下さった。Rooh!mishinaga-a!と、朝日に染まる黄金の葦の影から、白鳥の声を、津軽語として聞きとられる、工藤正廣先生、二〇一〇年、奇蹟のようなgozoCine、「拈花瞬目ー雪雄子と」ー(『大野一雄先生の古い橋を渡っているような』、ー吉増剛造)を撮影してくだすった吉増剛造さん。
 最後になりましたが、困っている時に、ひとつ ひとつを、命そのものの言葉として、私の中に根付かせ、舞踏への希望と勇気を今も与え続けてくださっている、私の舞踏のお母さん、大野一雄先生、ありがとうございます。
 白鳥が帰ってくるよー。
                                          雪 雄子