[うちのバッチャ] 10. バッチャの言う「恐ろしな!」

10. バッチャの言う「恐ろしな!」
 
今年の夏、家の庭に縄文時代の、竪穴式住居を作りたいとバッチャに申し出た時のことです。
「おばあちゃん、あの。梅の木の隣にですね、縄文式の…竪穴式住居を作りたいのですが」
そう言った時のバッチャの反応はこんなでした
「……恐ろしな!」
そんな台詞を笑いながらバッチャは言います。
その、「恐ろしな!」の内訳は、「まあ、あまり、歓迎できる話じゃないけども、良しとしましょう!」という、「許可」を表しているのです。それで本当に建ててしまうこの嫁もまた、この嫁ですよね。
うちの息子が1歳ぐらいの時に、うんちの入った紙オムツを持って走り回っていた時もバッチャは、「おめは、恐ろしい男だな!」と笑って息子の後を追いかけていました。
ひょっとすると。私のようなものが嫁に来てからというもの、バッチャにとって「恐ろしな!」と言う機会は格段に増えているのかもしれません。
 
そして、私は嫁としての機能が大変に低く、本人にやる気はあるのですが、非常に注意力が散漫でして。ご飯を食べてる途中で何かの用事を思い出して立ち上がり、その後すっかりご飯を食べていることを忘れ、洗濯物なぞを干すのに精を出してしまうのですが。
その洗濯物を干していることもどうやら途中で忘れ、うっかり出かけてしまうことが非常に多いのです。そういう時のバッチャは、
「さと子さ~ん!」
と、一声発し、
「おめ、なんもかんも途中でらよ!」
そうあっけらかんと言うのです。
「ハッ! 忘れてました! すみません!」
嫁は途中で思い出し、先ほどまでの中途半端なご飯の始末と、中途半端な洗濯物の始末を始めるのですが、それもまた途中で忘れてしまって、他のことを始めてしまうのです。これが、ほぼ毎日続きます。
そんなわけでバッチャはほぼ毎日、「さと子さ~ん!」と叫ばなくてはならないのです。申し訳ない話です……。
 
私も私で、きちんと最後までご飯を食べるとか、家事をやりきるようにすればいいのですが、何分本当に忘れてしまっているので、注意のしようがないのです。私が家中に置き忘れた飲みかけのマグカップは、ひどい時で5個発見されます。中身もココア、紅茶、コーヒー、緑茶と幅広く、長く置き忘れたものには白いカビが浮かんでいたりします。場所は居間、ケンさんの部屋、仕事場、階段、ストーブの上など……。このような状態を見て、ケンさんは私に言いました。
「おまえが置き忘れたのはマグカップか? それともおまえの脳みそか?」
……脳みそを置き忘れたつもりはないのですが、あまりにも不注意なことが続いたので、ひょっとして自分はなんらかの脳の病気にかかっているのではなかろうか? と不安になり、MRIのある脳神経外科に行くことに決めました。
脳の検査をしてみたところ、「脳には異常がない」ことがわかりました。ようは、ただ単なる、本格的なうっかり屋であることがわかったわけです。
 
うっかり屋の嫁は思いつきだけで生きています。それなのに何故か行動力だけはあるので、いつもバッチャを驚かせてしまうのです。 
「あの、おばあちゃん。今週の日曜日なんですが、庭でキャンプファイアーをやってもいいですか?」
これを言った時のバッチャの反応は即座に、「恐ろしな!」でした。
しかし、そう言われたらそれは許可するということなので。週末は自宅の庭で、キャンプファイアーをやろうと思っているのです。
 
 
 

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