[うちのバッチャ] 21. 男の行き先を止めるな

 
21. 男の行き先を止めるな
 
 最近、夏にふんどしを締める若者が増えているというのです。
「何故、今この時代にふんどしなのか?」
 それを考えると夜も眠れません。
 先日、昼のラジオでたまたまふんどしの話題が出ていまして。どうもそれはエコロジーと関係があるらしいのです。しかし、何故ふんどしがエコになってしまうのでしょうか? パンツだとゴムが伸びるからエコにはならないの? 
 お年寄りならふんどしをはいている可能性があるのではないか? と思うのですが、あいにくうちのジッチャもバッチャも下着は普通のパンツをはいています。
 その辺が謎でしょうがなかったので、ふんどしを締めている若者に話を聞いてみました。
 私の周りでは既に2人の若者がこの1年の間に、ふんどしを愛用し始めているのです。私の周りにいる男友達というのは、3人しかおりませんで。3人のうちの2人となると、私の男友達は約65パーセントがふんどしということになってしまいます。
 最後の1人がふんどしの方に行ってしまったら、私の男友達は全員、ふんどし男ということになってしまうので、どうか最後の1人はパンツのままでいて下さいと、願ってやまないのでした。
 ふんどしを日常的にはいている友達の名前は、エレキ君とテンダー君といいます。
 彼らはエコロジーな生活を求めるあまり、衣類も自分たちで自給自足しようとして、ふんどしに行き着いてしまったそうなのです。
「ふんどしは、ゴムのように締め付けがないからリンパの通りも良くなるし、男性は局部を温めすぎると良くないので、ブリーフよりもふんどしの方が熱がこもらなくていいんですよ。」
 と、エレキ君。
「スイッチさん、褌学会ってご存知ですか?」
 テンダー君が言いました。
「ふんどし学会……?」
「ええ。褌学会は褌を愛する人なら誰でも入会できるという、会則も入会金も事務局もない団体なんです。 そして、会に入る唯一の条件っていうのが、「青い三角定規」が歌う『太陽がくれた季節』の替え歌、『褌がくれた季節』を歌えることなんですね。」
「いや……、だからといって入るか入らないかは、別だよね……」
「僕たちは今、ヘンプ(麻生地)で作ったふんどしの販売をしてるんですよ。そして、うちの褌は先が切りっぱなしになっているんです。エレキ君、そこ説明して」
 すると、エレキ君が答えました。
「浅草のお祭りに、祭りになると必ず現れるという名物のおばあさんがいてですね。褌学会の人にこう言ったそうなんです。『あんた達、褌学会、褌学会って言ってるけどさ、褌の先っぽ、縫い止めてるんだろう?』って。学会の人が『ばあさん、それがどうかしたのか?』と言ったら、そのおばあさんが……、『男の行き先を、止めるな!』って」
「……男の行き先を?」
「止めるなって。だから我が社のふんどしは、先が切りっぱなしなんですよ!」
 ……よくわからないのですが、ふんどしの先っぽは、男の行き先なんですね。
 ふんどしをはいている人と話をすると、「そもそも何故人はパンツをはくのか?」というそもそも論に発展します。
 今まではただ惰性でパンツをはいてきましたが、果たしてパンツは本当に必要だったのか……パンツを、はかない自由というものもこの世には存在するのではないか? と。
 今時の社会に暮らす人なら、昔のように9時5時で仕事も終わらず、9時9時で当たり前のように残業があったり、子ども達は子ども達で学校が終わっても、塾に行ってまだ勉強をしなければならなかったりするのでしょう。そんな大変なことが、当たり前の世の中になってきていると思います。
 だけどせめて、そんな生活の中でもはく下着ぐらいは自由で良いのではないでしょうか。 行き先を止められないふんどしをはくことで、もしかしたら「生きる実感を得られるのかもしれない」と、思った次第でした。
 そんなわけで試しに頂いた女性用のふんどしをはいて近所の温泉に行ってみたところ、色も赤という非常に派手な色だったために、たくさんのおばちゃん、おばさん、若い娘さんからの視線を集めることになってしまいました。
 1人のおばあちゃんが言いました。
「いやあ……、これ私、昔若かった頃に生理帯として使ったことがあるわ。」
「ええっ、ふんどしをですか?」
「ええ、これに綿を入れて使っていたものだけど、パンツとしては使わなかったわねえ」
「ええっ、最初からパンツをはいていらしたんですか?」
 声をかけてくれたおばあちゃんは、どう見ても70歳から80歳といった年齢でした。
「パンツって昔はズロースって呼んでいたけども、昔からズロースはズロースの形だったわよ。だけど、小さい頃は着物を着ていたから、そもそも下着なんて着けなかったのよね。あら~、珍しい。本当に珍しい。」
 温泉に来て、近所のおばあちゃんから、思わぬ下着の歴史を知ることになったのでした。
 
 

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