[うちのバッチャ] 22. バッチャの魔法の言葉

 
22. バッチャの魔法の言葉
 
 青森港からフェリーに乗って、1才と5才の子どもを連れて北海道へ行ってきました!
「お船、早いねえ!」
「マグロがいるねえ! きっとあれは、大間のマグロに違いない」
夫を置いて、実家のメンバーと子供達を連れて1週間……。釧路までは車で函館から約10時間!
 バッチャに北海道旅行に子どもを連れて行く旨を伝えると、バッチャはこう言いました。
「まあ、どんでも(どうでも)いいばって、気を付けて行ってきなさい!」と。
 バッチャは、何を言ってもこう答えてくれます。「2週間、ブラジルに行ってきてもいいですか? ブラジルでサンマを売ってきたいので……」の時もそうでしたし、「おばあちゃん庭に、縄文式の……竪穴式住居を建ててもいいですか? ちょっと穴を掘って、建てるぐらいなので」と言った時もそうでした。
 何を言っても「どうでもいいから無事で帰ってきなさい!」と言って旅立たせるバッチャという人は、本当に大きな人です。
 仕事のあるダンナは置いてきぼりで、ダンナの面倒は全てバッチャに任せて出かけるのに。
 こんなに迷惑な嫁はいないと思うのですが、「まあ、どんでも(どうでも)いいばって無事に帰ってきなさい!」というのはある意味、悟りの域に達している気がするのです。
 深夜2時に青森港から出発して朝6時に函館に着き、車で9時間かけて釧路までやってきた我々一行。
 釧路に嫁いだ姉に会うのは1年ぶりです。私には3歳年上の姉と、7歳年下の妹がいまして。私が高校生だった時に当時大学生だった姉が、小学生だった妹と「茶碗蒸しの上にのっているナルト」をめぐって本気のケンカをしていたことを、今でもよく思い出します。
 釧路へ向かう途中、お昼ご飯を食べにサービスエリアに入ると、ナルト1つをめぐって本気でケンカをしていた妹のひろちゃんが、保育園に通ううちの長男に「ひろちゃん、ナルトちょうだい!」と言われ、「ハイハイ」と大人しくナルトを食べさせているのを見て、「妹も大人になったなあ……」と感慨に耽りました。
 函館の朝市では丼にのっていた4本のカニのうち、2本を長男にあげたひろちゃん。
「ひろちゃんも大人になって……」
 と思った瞬間、長男が言いました。
「もう1本ちょうだい!」
 ひろちゃんはすかさず言いました。
「もう1本は、ダメだ!」
 ……さすがに4本中の3本のカニは、譲れなかったようです。
 朝市で初めていくら丼の存在を知った1才のマペ次郎は、いくらにいたく感動したらしく。
 店のいくら丼のサンプルを全て指さして、「ヤー!(どうやら『いくら』と言っているらしい)」と声をかけておりました。
 水槽の中で泳ぐイカを見て、「きんぎょ! きーんぎょ!」と興奮するマペ次郎。「そんなに白くて大きな金魚はいない……」と思いながらも、北海道気分はぐんぐん高まって来るのでした。
 漁港好きの私は憧れの漁港、牡蠣の水揚げで有名な厚岸漁港にも立ち寄ってきました。
 女子大生がヴィトンのバッグを愛するように、漁港好きの私は厚岸という地名になんらかのブランド意識を感じていました。厚岸……厚岸の牡蠣……なんとしてでも厚岸には寄らねば……と。寄って生牡蠣を食べねばならんと思い、買った生牡蠣をその場で食べて参りました。
 一週間も家を離れ、北海道の姉の家で。毎日毎日バッチャに今日一日の報告をしていたら、「そう毎日電話しなくても、いいんじゃないの?」と姉に言われ、気がつきました。
 バッチャに一日の報告をしないと、寂しいのです。
 毎日顔を見て、バッチャの作ったご飯をのうのうと食べていたものですから。バッチャの顔を見ない毎日というのは、非常に寂しいものなのでした。その日もバッチャに電話をかけていると、息子がいとこのケーマ君とケンカして、電話がつながる瞬間に泣き出してしまいました。突然泣き出す息子。つながる電話。
 電話に出て、とりあえず言い訳から始める私。
「あの。さっきまで笑ってたんですけど、急に泣き出して……!」
 すると、バッチャ。
「泣いたり笑ったりさねば(しなきゃ)、どすばー!?」
(……ど、どすばー!?)
「泣いたり笑ったりして、おっきく(大きく)ならねば、どすばー(どうするんだい)? どれどれ、バッチャだよー。」
 泣いてた息子は一瞬で泣きやみ、涙を拭きました。
 私はまだまだ子育て初心者マークなので、子どもが泣き出すと不用意に焦って、なんとかしようとするのですが。バッチャぐらいのクラスになると、泣いたぐらいでは動じません。むしろ、泣けば喜ぶぐらいです。
 泣いたり笑ったりして、大きくなるんだよ。
 それを聞いたら、どんな風に生きてもいいんだなあ、と思えて。また一つ、自由になった気がしたのでした。
 
 

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返信数:4

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  1. 久作 より:

    今日、我が家ではネットスーパーなるもので新巻鮭を一匹、購入しました。魚をさばくのが苦手な私は、三枚におろしてもらいました。まるまる一匹買うなんて、初めての経験でした。あまりの立派さに息子共々、感激の嵐に見舞われてしまったのです!!!世の中は本当に便利になっているんですね。旅行に出かけることはありませんが、秋のごちそうを堪能することができました。

  2. おふく より:

    日本人は
    「人様に迷惑かけずに生きなさい」
    って子供に教えがちですが、
    インド人は
    「生きてるだけで色んな人に迷惑かけるんだから、あんたも人様の迷惑を許せる人になりなさい」
    って教えるんですって。
    ばっちゃはインド寄りですね。
    私もそれ聞いてから、インド寄りになろうと心がけてます。
    子育てっておもしろいね。

  3. yamadaswitch より:

    久作さん

    良かったですね! 新巻鮭!
    感激の嵐って、すばらしいですね。(^-^)p

    すいっち

  4. yamadaswitch より:

    おふくさん

    インドの教え、私も大好きです。
    迷惑を許せる人に。
    だからか、インド人がものすごいのは。(笑)

    すいっち