[うちのバッチャ] 23. フキの収穫

23. フキの収穫 
 
 夏の暑い盛りを過ぎて、9月に収穫するのは桃の木の下に生えているアキタフキです。フキの収穫の時は近所のバッチャたちが総出で手伝いに来てくれます。
 刈り取られたフキはブロックを積んで作った即席の竈で、余った木材に火を付けて焚き、ドラム缶でできた鍋に水を張って茹でられます。
 茹でる時はこぬかを入れて固めに茹でると、色合いもよく、美味しく茹で上がるのだそうです。
 ところで、茹でる時に使うこのドラム缶ですが。横に真っ二つではなくて、縦に真っ二つになっているのですよ。よく、こんな珍しいドラム缶鍋があったなあとバッチャに聞くと、
「こったのあればいいと思って、作ってもらったんだねん!」
 だそうです。
「フキ茹でるのにドラム缶こと、半分さして作れねか?ってそこの工場の人さ聞いたら、なんぼでも(いくらでも)作ってけるよって言ってけて(くれて)よ。いや、なんぼでもは必要ねえって断ったんだばって」
「ええ。確かにこんな大きい鍋は、家に一つあれば十分ですね。」
「たいした便利だっきゃ。だばって(だけど)、作ってけた人がその後、3日後ぐらいで自殺してなあ」
「じ、自殺!」
 すると包丁でフキの筋を剥いていた近所のバッチャが言いました。
「すごい自殺だったのよ。何も、死なねくてもいいんたものなんだばってなあ」
「んだ。なんも死なねくてもいいもんなんだばって」
「そういえばこの間、山さ入って死んだ人もいたなあ」
「んだ。草刈り器でやってまって……あれは、すごかった~。」
 さ……流石、男性の自殺率の高い県、青森県です。
 バッチャ達はこの後、「どこの村の自殺が一番すごかったか」について語り合っていたのですが、マジでしゃれになんないくらいすごかったです。しかし、バッチャ達の「なんも死ぬことねえのになあ。」という言葉には、妙な説得力があります。
 
 普通に生きていれば生きているだけで、仕事のことやら家のことやら、地位や名誉や恋愛やお金のことなどで、悩みに果てはありません。だけど、生きてること自体に疑問を持って悩むだなんて。どれだけ頭がいいんだ? と思ってしまいます。
 だって、動物は自殺しないじゃないですか。
 動物は生存本能に忠実ですから。死にたいなんて思うのは、人間だけだと思うのですよ。
 どれだけ頭がいいんだよ? と。だけど本当に、どんなに考えたって、死ななくてもいいと思うんです。
 死にたいと思うほどの危機的な状況だったら、その場所は危険な地帯なのだから、逃げた方が得だと思うんです。同じ逃げ道でも死なずに、物理的に逃れる方法があると思うのです。
 バッチャ達は、どんなことがあっても80年近くも生きてきたからバッチャなのです。危険を避け、または耐え。ただひたすらに黙々と。フキの皮を剥いてきたバッチャ達だから、あっけらかんとして、明るいのだと思います
 
 

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