[うちのバッチャ] 33. ネズミが出た!

 
33.ネズミが出た!
 
 人生に「やりたいこと」と、「やらなきゃいけないこと」と、「かきゅう的速やかにやらねばならないこと」があるとしたら、私の場合、かきゅう的速やかにやらねばならないことは、バッチャの技を継承することだと思っているのです。
 わが家のバッチャの後を継ぐのは、私しかいないわけで。何故なら、間にいるはずのお姑さんはまだまだ現役で会社員として働いているわけで。家にいて漬け物を漬けたり、村の付き合いをしたり、畑を耕したりするバッチャの仕事は、今、バッチャが死にでもしたら(縁起が悪いですが)、バッチャの代で突然、途絶えてしまうのです。
 バッチャがいなければバッチャの料理は食べることができなくなってしまいます。何せ、漬け物に使う野菜の土作りから始めてしまう人なので。
 その技の修得に10年かかるとしたら、今すぐに始めても、バッチャには90歳までは確実に生きてもらわないと困るわけで。入門生である私は今年、息子が保育園にご入園したら即、バッチャの道……柔の道でも剣の道でもない、バッチャの道の師範格を取るために、がんばらねばならないのです。
 
 バッチャの道の基本は畑から始まります。バッチャが畑で作る野菜は、キャベツも大根もものすごく巨大で、収穫すると中にコロコロした虫がたくさん入っており、虫も食べにくるほどおいしく味わい深い野菜達です。
 冬の間に昨年採れた米やじゃがいもを小屋で保存しておりましたところ、今年はネズミに囓られてしまいました。
「まんず、ネズミも生きていかねばマネはんでなあ~!」
 と、意外なほどにネズミに対しては寛大なバッチャです。しかし、囓られたジャガイモの歯形を見ていたら、私は頭に来てしまいまして。どうにかしてネズミに一泡吹かせたいと思っていたら、夫がこんなアイディアを出してきました。
「捕まえて見せしめにしたらどうだ? この者、米を食ろうたりって」
「この者、米を食ろうたりって、その文章一体、誰が読むのよ……!」
 まあ、そんなわけでネズミも美味しく食べにくるわが家の野菜なのですが。
 秋に収穫した野菜もまだまだ小屋にあり、その野菜で作るバッチャの料理がまた変にうまく……。言うならば「変うま」なのです。
 バッチャの作る麻婆豆腐は、市販の麻婆豆腐の素を使って作っているのに、味わいが全然違うのです。
 一体何故なのか、その秘密の味を確かめねばと思い、バッチャが作っている様子を横から見ていると……。
「お、おばあちゃん、麻婆豆腐の素に肉、入っていても入れるんですね!」
「んだよ! 豚肉入れねば、味出ねえはんで!」
「それで、にんじんとタマネギとピーマンも入れるんですか?」
「これは、みじん切りにして炒めて混ぜる!」
「あ~、ラー油で最後に味付けを……! どうりで市販の麻婆豆腐とは、味が違うはずですねえ」
 そのせいなのか、なんなのか。わが家の「不思議にうまい料理」は、ギョーザや肉じゃが、牛丼に至るまで、バッチャの独特のセンスで不思議なバランスを保ちながら作られているのです。そのレシピを体得するためには、今年は脇目もふらず、ネズミをやっつけつつ、バッチャ道に励まねばと。そう決心したのでした。
 
 

青森県の最強バッチャが繰り広げる、愉快で楽しい村のお年寄り情報満載エッセイ集!   

これを読んだら即・元気!!

『うちのバッチャ』
 
山田スイッチ 著
山田スイッチ社 刊
¥1,000
 
お買い求めはこちらから!

 

 

 

 

 

 

 

返信数:2

この記事へのコメントはRSS 2.0フィードで確認できます。

Both comments and pings are currently closed.

  1. 久作 より:

    バッチャ検定、チョー難しそうですね!!!!でも千里の道も一歩からなのです(*_*)がんばって、スイッチさんファィト!!!

  2. yamadaswitch より:

    ばっちゃの年になるまで、あと48年かかりますからね。(^O^)
    気長にいきます。