[うちのバッチャ] 26. パリのハンチャ


26. パリのハンチャ
 
 友人に、海外で仕入れた生地を使ってお着物や帯を作る、着物作家のやまもとゆみさんという方がいます。
 彼女は仕事柄、半端ない数の生地を仕入れるので、その生地の余りを譲っていただいたところ、パリやロンドンで購入された素敵な布が、たくさんわが家に届いたのでした。
「おんろ~、これだば、柄っこいいなあ!」
 そうバッチャが言うので、
「おばあちゃんも何か作ってくださいよ!」
 とお願いすると、バッチャは……、そのパリのオシャレな布で素敵な、ハンチャ(袖無しの半纏)を作ってくれたのでした。
 
 バッチャは何故か、一年中ハンチャを作っているのです。バッチャがハンチャを作っていると、「今年の新作は一体、どんな柄かしら?」と思って見てみるのですが。やはり、どんな布を使って作ってもハンチャは、日本という存在感を出してきますね。水玉模様にうさぎの柄とか、そんな遊び心のある生地を選んでバッチャは布あわせを楽しんでいるのです。
 ハンチャをバッチャにプレゼントされ、ありがたいのでよく家で着ているのですが。ハンチャを着ると、何故か気持ちがおばあちゃんっぽくなりますね。子ども達がケンカを始めても、
「これこれ、ケンカさねんで(しないで)仲良く遊びへんか(遊びなさいよ)」
 と、口調もおばあちゃんっぽくなってしまいます。
 わが家では、長男も次男も寒くなるとハンチャを着ます。子供は成長するのが早いので、バッチャは1年ごとにキャラクター模様の青い生地を買ってきて、裏にネルの生地を合わせて子ども好みのハンチャを作ってくれます。このハンチャというアイテムは、ちょっと羽織るだけでも完全な田舎の子供を演出できる、すごい服なのです。自分用の他にも近所の人の分とか、冬に入る前にバッチャは色んな人にハンチャを縫ってプレゼントするのです。
 
 バッチャがハンチャを縫うのはもう見慣れた光景なのですが。パリの布で作るハンチャは、 ロマンティックな柄と日本の農村文化がコラボレーションした形となり、何故か、強烈にアバンギャルドなものになっていたのでした。
「おばあちゃんコレ、お、オシャレですね……」
「んだべ? 着てみへ!」
「私のだったんですか!」
 そんなわけで。アバンギャルドなハンチャを着て今年の冬を過ごしています。私の周りには、アバンギャルドな(旧来にない)お年寄りが多いなあと、最近とみに感じます。
その後、バッチャは電動自転車に乗って、隣の村まで出かけていきました……。
「何年も乗ってねかったんだばって、乗ろうと思ったら、乗れたいの!」
 電動自転車をこいでバッチャが言います。子どもから風邪を染されても、たったの一晩で快復し、翌日には畑を耕していたバッチャ。パリのハンチャを着て背中を温め、横になって一晩寝たらもう、快復しているのです。
 この元気さはもはや、国宝級だと思えるのでした。
 
 
 

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これを読んだら即・元気!!

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