着物デザイナーのやまもとゆみさんは、誰に何の色が似合うか、
「全部わかるよ」、という。
「スイッチさんにはわりとはっきりした色が似合うの。」
と、ゆみさんは真っ直ぐにこちらを見て言った。
そういう時のゆみさんの目は、何か人の奥底にあるものを見つめているような、
シャーマンの目に近くなる。
彼女は世界中を旅して彼女の求める生地を探すが、
その生地が着物になるか、帯になるかは、
その布地に出会った瞬間に、
わかるのだという。
「この生地は帯、この生地はお草履……」
布に出会った瞬間にその完成形が見えるのだ。
やまもとゆみのお草履は、儚い物語の結晶だ。
鼻緒の美しさ、台に込められた物語に足を通すと、
履いている自分が嬉しくなる。
ゆみさんは「KIMONO姫」の創刊号を作った人だ。
KIMONO姫の中で、履き物やさんのページを作り、
彼女は履き物屋さんになった。
パリ滞在中にクリニャンクールで見つけた古タイヤを底につけた畳のお草履。
それに自分の作った鼻緒を縫いつけた瞬間に、
彼女の職人としての魂は指先から芽生えたのだ。
何もかも手探りで、ゆみさんの形にしたいものを作ってくれる
職人さんを探した。
ゆみさんは昔、鼻緒の刺繍を見る人の側に向けて刺したら、
履く人間の正面に向けて刺繍しろ。下駄とはそういうもんだ、と。
職人さんに叱られたことがある、と語った。
それによって、洋服は人に向けて着るものであるが、
着物は自分に向けて着るものなんだと知った。
着物は、自分の心を満たすために着るものなのだ。
あの着物にこの帯を合わせて、お草履はこれ、帯締めはリボン。
止まらなくなるイメージ。彼女の頭の中から指先に、
つくりたいという思いが。美しい着物への愛が溢れている。
目の前にいる人に、浮かび上がるイメージ。
この人に一番似合う色は、紫がかったピンク。
お草履は、帯は、帯締めは……。
ゆみさんと一緒にいると飽きることを知らない。
目の前で様々なイメージが湧きたっている彼女を見てると、ゾクゾクする。
そんな人に会えて、着る人がラクになる着物の着方を教わって。
本当にしあわせな日々だった。
ゆみさんのつくった新しい本。
乙女のパリ絵本が本日発売になりました。
「この本の中のパリに行きたい」
お料理研究家の、福田里香さんの言葉です。
本のサイトは、こちら。
↓こちらは、可愛い雑誌のご紹介。
かわいい音楽すてきな暮らし no1 (1)
¥1,890
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ゆみさんの旅エッセイとドキドキするような
着物のコーディネートが見開きで載っています。
胸が、乙女になりそう。