第一章 うちのバッチャ現る
01. 運命の人
運命の人にはもう、出会えないのかもしれない。
そんな風に、30代も半ばを迎え子どもを2人産んだ後には漠然と、「もう、私に新しい生き方を切り開いてくれる人との出会いは、訪れないのかもしれない」と考えてしまうのですが。思いがけないところに伏兵はいるものです。
これ以上出会うはずもないというところに、当たり前のようにそこにいた人。私にとっては、結婚した相手のおばあちゃん。津軽弁で言うと、バッチャが私の人生にイノベーション(技術革新)をもたらす存在だったのです。
結婚したらすごいバッチャがオマケでついてきた。
まさかこんなことになるなんて思いもしなかった私は、青森県の平川市という、周りが田んぼで山に囲まれたお年寄りの多い地域に嫁ぎ、90才のダンナのおじいちゃんと、84才のダンナのおばあちゃん、38才のダンナ、今年4才と8才になる子ども達と一緒に暮らしています。
青森県で暮らす醍醐味といえばやはり、お年寄りとの暮らしでしょう。
お年寄り……一言で言ってしまうにはあまりにも、我が家のバッチャは規格外なお年寄りなのです。
変わった人が好きな私はダンナであるケンさんを本当に風変わりな人だと思って結婚したのですが、今ではケンさんよりももっと風変わりなバッチャに心を奪われ、「どうしてもっと早くに気付かなかったの?」と、思っているのです。
そんなバッチャの性格は、一言で言うならダイナミック……。破天荒とは、正にバッチャのことだと思います。
私が嫁いできた当初、わが家の2階には20年ほど前から「1人用サウナ」というやっかいな昭和の遺物がありました。
サウナが銭湯に置かれていなかった時代に重宝されていたその家庭用サウナは、電気代が恐ろしいほどかかることから家族に利用されなくなり、そのサウナを買った当の本人(義父)ですらサウナを置き去りにして、義母と自営で営んでいる事務所の2階に移り住んでしまいました。そしてサウナは……20年近く、ただのやっかいな箱として放置されていたのでした。
タンス2台もの大きさのそれは非常に重く、横幅は部屋のドアをくぐり抜けることが不可能でした。(どうやって家の中に入れたのでしょうか?)
このサウナをどのようにしてこの家から追い出すか……私は嫁に来てからの3年間、ずっとそのことで悩んでいました。サウナ……サウナが邪魔……。そう考えあぐねていた時にその事件は起こりました。
私が買い物から帰ってくると、突然家の前にがれきの山が積まれてあったのです。事故でもあったのかと思って駆け寄りよくよく見ると、それは粉々になった例のサウナでした。
「ええっ!」
そこへうちのバッチャが来て、あっけらかんとして言いました。
「あんまり邪魔だはんで、バラバラさして、窓から投げたんだねん!」
ふと見ると、その手にはチェーンソーが握られておったのでした……。
一体、どこの世界にチェーンソーで家具をバラバラにするお年寄りがいるというのでしょうか。都会では、お年寄りはカルチャーセンターに通って俳句とか社交ダンスなんかをたしなんでいるはずなのに、うちのバッチャはもう死んでもおかしくないような年齢で、チェーンソーで家具をバラバラにしたりするのです!
天を破るほど荒い性格……破天荒とはまさにこのこと。
バッチャの心はまだまだ十代なのです。
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何度、読んでも顔がにやけてくるのを止める事ができない。
まあ、久作さん
最高の賛辞です!
この間、近所のおばあちゃんが本読んでくれて、
「わたしはあなたに、襟を正します!」と
言ってくれたのにはびっくりでした。。。
おばあちゃんたちって、本当にすごい言葉を知っているなあと。
襟を正すのは私の方です!
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