無意味せんげん - 山田スイッチ –
山田スイッチは、一切意味を求めません。ちなみに7歳男子と3歳男子を田舎で子育て日記。
2013/08/12 カテゴリー: うちのバッチャ。 タグ: うちすべバッチャもの叫び泣き [うちのバッチャ] 03. 生きてるものだもの、泣きもすべし、叫びもすべね への1件のコメント
 
 
03. 生きてるものだもの、泣きもすべし、叫びもすべね
 
その年は、年初にアメリカのオバマ大統領の就任や、日本の麻生総理の失言問題、中川元財務・金融相の辞任と。様々なニュースが飛び交っていました。一体、今年はなんという年なんだろうか……と一緒にテレビを見ていたら、バッチャが一言で一連の事件を総括したので驚いてしまいました。
「なにほどにぎやかな年だいば(だろうねえ)!」
に、にぎやか……!?
黒人初のアメリカ大統領就任も、自民党の支持率低下も、G7で酔っぱらい会見をした大臣の辞任も、「にぎやか」という一言で済ませてしまうバッチャ……。バッチャの大きなくくりには驚かされてばかりです。
 
何度もテレビで放送される中川元大臣の酔っぱらい会見に、バッチャは終止符を打ちました。
「中川も、なんぼあてもねえな!」
なんぼあてもねえ……。まあ、ようするに。津軽弁で「大した価値がない」と言い切られてしまったわけです。
世の中、色んなニュースが出回っていますが、最近のテレビは細かく報道して視聴者の関心を得ようとする傾向が強いと思うのです。テレビだと受信している我々は、うっかり余計な物まで受け取ってしまいます。
殺人事件の詳しい内容なんてものを、朝っぱらからニュースで聞いてしまったら、受かる受験も受からなくなるだろうし、うまくいくはずの告白もまずくいくかもしれないし、気重になってバレンタインデーにチョコを渡せなくなる女性もいると思うのですよ。
 
しかし、そういう時にこそ、わが家の斬り捨て名人・バッチャです。こういう時にバッチャに事件をまとめてもらうと、すごくスッキリするのです。
バラバラ殺人報道を見た時のバッチャの一言。
「世の中、ひとごろしばっかだな!」
人殺しばっかりですか!
すごい斬り捨て方ですが、「そうですねえ!」と答えてしまう私がいます。バッチャの世界では様々な細かい事象が、ものすごくおおまかになっているみたいなのです。
先日、うちの息子がイスに顔をぶつけて大泣きしておりましたら、ジッチャが寝床から出てきて、「泣いてらんだか~」と、心配してヨタヨタと近づいてきました。そこへバッチャが出てきて、ジッチャを一喝。
「生きてるものだもの、泣くもすべし、叫びもすべね!」
……い? 生きてるものだもの……?
ものすごい総括の仕方を目の当たりにした瞬間でした。
 
「バッチャはすごいなあ」と思いながら、晩ご飯の後にのんびりと居間でテレビを観ていたら、観ていたバッチャが突然、こんなことを言い出しました。
「これ、安室奈美恵の前のおやんじでねが?」
観ると、テレビには歌手の安室奈美恵さんの元夫(津軽弁で前のおやんじ)であるSAMさんが映っていたのでした。
カリスマダンサーのSAMさんを、安室奈美恵の前のおやんじと呼ぶバッチャ……。
バッチャの脳の作りが若者とはかけ離れているところを感じます。
ちなみに、その時の番組はカリスマダンサーの3人が高校生のストリートダンス・コンテストを審査し、グランプリを決めるというもの。
こんなダンス番組を観て、「おんろ~、安室奈美恵の前のおやんじが映ってらのー」と観るのは、かえってすごいことだと思います。
バッチャはよくテレビを観るので、芸能ニュースに関しては私よりも詳しいぐらいです。
 
「このアッパ、どうなってんずな!」
こんな台詞が時折居間から聞こえてくるのは、どこかの芸能人の嫁(津軽弁でアッパ)が、何かどうしようもない発言をしている時です。バッチャにかかればヒラリー夫人だって「クリントンのアッパ」と呼ばれてしまうのです。その時は確か、シンガー・ソングライターの泰葉さんが元夫の春風亭小朝さんに対する「金髪豚野郎」発言が取り沙汰されていた時でした。そういう時、バッチャは塩せんべいなどをかじりながら、深い嘆息をついてこう言うのでした。
「まんずまんず、よくこったのと結婚すもんだな~、まんずまんず……」
と……。
 
バッチャの目線で物事を考えると、何もかもが平和に思えてしょうがなくなります。TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の受け入れ問題も、
「わいは~! たんだでねな~!(ただでない。イコール「大変」という意味)」
の一言で済んでしまいます。
この一言で全てを表す言語の獲得こそが、真のバッチャへの道なのです。
どんなに複雑な心境であっても、津軽弁は「おんろ~!(あらまあ)」とか、「わいは~!(あらまあどうしましょう!)」という短い音に変えてしまいます。この言語のシンプルさには、素晴らしいものがあります。
言葉は複雑になればなるほどに、多量な情報を盛り込めることになるのですが、その分一つ一つの言葉を受け入れる側に、小さな悩みを発生させます。
ファーストフード店でハンバーガーを注文すると、
「ご一緒にポテトはいかがですか?」
と言われるのですが、それを言われると私は悩んでしまうのです。「ご一緒に……ポテトを、食べるべきなの? それとも、食べないと空気読めてない雰囲気になるの……?」と。
もっとシンプルに、
「イモ、くな?(イモ、食べるか?)」
と言われた方が、「食う」または、「かね(津軽弁で食べない)」と、即答できる気がします。単純化することは小さな悩みを減らすことでもあるのです。
言葉をシンプルにすると、考え方までシンプルになるような気がします。
先日、テレビを観ていたら、お笑い芸人の伊戸田潤さんが出ていました。
「あ、安達祐実ちゃんの前のおやんじだ!」
そう思った私は、相当に脳がバッチャ化してきているようです。
 

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1件のコメント

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この話を知ってからうちではSAMさんは「前のおやんじ」になりました。