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ジッチャが旅立ちました。

先月30日の夕方にうちのジッチャが亡くなりました。
享年92才の大往生でした。
 
肺炎になって入院していたのですが、
その日の昼にお見舞いに行くと、
ジッチャはひ孫の師匠を見て嬉しそうに涙を浮かべて。
バッチャにウンウンと頷いて、
 
ああこれは、あと6~7年は生きるなあと思ったその日の夕方に、
病院から電話がかかって来て、慌てて車に乗り込むと
太陽が強い光をパーッと走らせていて
「ああ、虹が出るな」と思った瞬間、
空に大きな虹がかかっていたのでした。
 
ジッチャの虹は1時間以上空に架かっていて、
橋を渡る時はダブルレインボーが見えました。
翌々日の火葬では、空に日輪が出ていました。
 
 
昨日、納骨を終えたのですが
お墓に行く途中、田んぼに白鷺が5羽渡ってくるのを見て
ジッチャの起こしてくれる(と思っている)マジックから
今、目が離せません。
 
ジッチャは虹や白鷺、日輪とか、たくさんのプレゼントを置いて
逝きました。
 
ジッチャ、ありがとうね
 

[うちのバッチャ] 05. 不動のジッチャ

05. 不動のジッチャ 
 
うちのバッチャがいつも元気だと感じるのは、いつも行動的であるからだと思うのです。横になって昼寝している時でも常に、バッチャは「今日の晩飯は何にするか、畑の土は肥料を入れるか、入れないか」を考え続けているのだといいます。(傍目には寝ているだけにしか見えませんが……)
その寝ているバッチャが突然、「よし!」と立ち上がるので驚かされるのです。
今年、一番バッチャが元気だと感じた瞬間は、畑になっているよその土地を買って、その土を500メートル先のわが家の畑に移植した時のことでした。
 
わが家の田んぼの隣の土地が、わずか15万円で売りに出されたことによって、その土地を購入したバッチャは田んぼの面積を拡げるつもりだったです。
土地を田んぼにする時は、水を入れるために土を掘って低くする必要があります。
「黒ーくて、いい土だはんで、畑さ運ぶべ!」
と、バッチャは言いました。土を猫車かなんかで畑に運んで、鉢植えにでもするのかな? そう思っていると……、甘かったのです。
うちの親戚には、重機レンタルの会社をやっている人がいて、ブルドーザーでもトラックでも何でも任せろというおじさんがいます。
その重機の持つ勢いがバッチャの持つ豪胆さに拍車をかけているらしく、畑の土はショベルカーで掘り起こされ、ダンプに積まれて500メートル先のわが家の畑に移植されることになりました。ドドドドドド……ドドドドドド……!
 
ダンプが一日に何度も畑を往復して、わが家の前を通りました。自分の家の前を重機が何度も往復するのは、意外と恐ろしいことでした。家を揺らすほどの地鳴りが響いてきます。
「一体、何が起こったの?」
子供と抱き合い、脅えながら外を覗いてみると、ブルドーザーが持ってきた土をゴゴゴゴとならしているところでした。3歳の息子が興奮して叫びました。
「あっ、ブルドーザーだ!」
私も叫びました。
「おばあちゃん、激しすぎるよ!」
こういうことをバッチャは、ほぼ独断でやってしまいます。一家の長であるジッチャに相談するとか、そういった面倒なことは一切しません。
わが家のジッチャとバッチャは、まるで正反対の性格をしているのです。
 
うちのジッチャは大正11年の生まれで、ただいま90歳。ぼけることなく毎朝毎晩、自分でご飯を食べて、天気のいい日は畑を散歩して、天気の悪い日はソファに座って1日を過ごします。ジッチャは物静かでほとんど動きません。ジッチャの生活圏は寝床と庭、茶の間で構成されています。若い頃から酒もタバコも飲まず、しかも小食で肉類はほとんど食べないので返って健康になってしまったのか、よくうちのバッチャに「90年も生きて飽きねえもんだか?」と、聞かれています。
ジッチャは怒るということがありません。終日、おだやかに過ごしています。バッチャはそんなのんびり屋のおじいちゃんの「動きが遅くてトロトロしている」ところが気に入らないのか、「早くさながー!」と言ってジッチャのケツを叩いています。
そんな時でもジッチャは、「いで(痛い)じゃ、いでじゃ~」と、なんとものんびりとした返答しかしません。
ジッチャのように欲のないお年寄りも珍しいです。
バッチャは破天荒で時にはブルドーザーまで稼働させるアクティブなお年寄りで、まるで泳ぐのを止めたら死んでしまうマグロのようによく働きます。
 
まるっきり反対の性格……それなのに、60年以上もこの2人はこの性格で一緒に暮らしているのです。
20代の頃、私はTBSテレビ『世界ふしぎ発見!』の海外レポーター・「ミステリーハンター」になりたくて、夫となるケンさんと離れて東京に暮らしていました。ケンさんは仕事柄、決して青森を離れようとはしませんでした。なぜならケンさんの仕事は、不動産業だったから。
職業に「不動」という文字が付くほど、動かない仕事はないのですから、ちょこまかと動く私について、東京へ来るはずがなかったのです。
しかし、ちょこまかと動く人間は、ひょっとするとジッチャのように動かない人間と一緒にいないとダメなのかもしれません。
「2人とも動き回っていたら、一生のうちで会える日も少なくなってしまうはんでの」
そんなわけで、バッチャが勢いよく働いていられるのは、ひょっとすると、動かないジッチャのおかげなのかもしれません。
 
 
 

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